ロシアとサウジアラビア間の直行便が再開される意味
もう一つの懸念は、これまでにも触れたことがありますが、イスラエルによる対パレスチナ、レバノン、シリアへの攻撃が拡大し、同時にイランと親イラン勢力(フーシー派など)への圧力が拡大した場合、すでに対イスラエル包囲網を築きつつあるサウジアラビア王国を核としたアラブ諸国とイラン、そしてトルコと、イスラエルとの間での軍事的な緊張が極限まで高まる可能性が指摘されています。
現時点では、イランもアラブ諸国も核兵器を保有していないと思われますが、イスラエルに関してはその限りではなく、トルコについては、意味合いは違いますが、NATO軍の核弾頭が配備されています。トルコにあるNATOの核兵器がイスラエルに対して用いられることはないと断言できますが(普通なら)、時間軸的にアラブ諸国がイラン、そして中ロと組んで核開発に乗り出すようなことになれば、中東地域のパワーバランスに大きな変化をもたらすことになります。
直接関係がないように見えますが、近くモスクワとリヤド(サウジアラビア王国)間の直行便が再開され、両国間の関係改善と経済的な結びつきの強化が図られるという情報が入ってきていますが、中東アラブ諸国はロシアとの協力を強めることで、安全保障面での体制強化も(そこに核兵器の問題も絡むと主張する専門家もいます)図られるのではないかと見ています。
サウジアラビア王国をはじめとするアラブ諸国が、イランも含め、一夜にして核保有国になり、即座にイスラエルと対峙することは考えづらいと思いますが、現在進行形のイスラエルとアラブ諸国(+イランとトルコ)の緊張の高まりが危険水域で長期にわたって持続してしまう場合には、何が起こっても不思議ではないと感じます。
こちらについても、まずは緊張を解すためにガス抜きを行うべく、紛争予防のための調停を実施しています(現時点では、あくまでも非公式な形式を取り、参加者を“専門家”として扱って、個人的な意見を出し合うような場にするように心がけ、何とか“本心”をベースとした落としどころを見つけられないか努力しています)。
各国が懸念する北朝鮮の暴発による核兵器使用
では同じく緊張の高まりが顕著になってきているアジア太平洋地区はどうでしょうか?
北朝鮮に対しては現在、ロシアと中国の主導権争いのおかげで何とかバランスと制御が取られていると見ていますが、ロシア・中国を含め、地域の各国が懸念しているのが、北朝鮮の暴発による核兵器使用の危険性です。
今はロシアと接近を図り、弾道ミサイルの技術と核弾頭の小型化についての技術と知見を得て軍事力を高めて、アメリカとその仲間たちに攻め込まれないための力を蓄えている北朝鮮ですが、暴発しないためのグリップはロシアがまだしっかりと握っていると言われています。
ただそれも今後の国際社会におけるロシアの立ち位置と影響力によっては変わる可能性も指摘されており、北朝鮮の核を巡る制御については、個人的には不安を抱いています。
同じく北朝鮮に影響力を持つ中国については、最近、ロシアの方ばかり向き、中国からの呼びかけにあまり応えない北朝鮮の姿に不満を抱くと同時に、懸念を抱いているそうですが、一貫して北朝鮮が核兵器を保有することも、使用することも絶対的に反対していることから、ロシアのグリップが緩んだと見たら、中国が代わりにグリップを効かせようとするのではないかと期待しています。うまくロシアと中国が連携が取れるといいのですが。
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