嗅覚低下と死亡の関係を媒介する要因
- 調査開始から6年後の時点では「認知症」が最も重要な要因で、嗅覚低下と死亡リスクの関連の23%を説明。
- 12年後には「フレイル」の影響がより大きくなり、認知症の影響は6%まで減少。
- 嗅覚テストでの誤答が1回増えるごとに、APOE ε4遺伝子を持つ者の死亡リスクが6年後に12%上昇することが判明したが、12年後にはこの差は消失した。
フレイルと感覚器官の関係
加齢に伴う感覚器官の機能低下とフレイルは高齢者に共通する症状である。フレイルは寝たきり状態に直結し、誤嚥性肺炎などによる死亡リスクを増加させる要因となる。
国際共同研究チームに日本から私自身も参加し、世界のデータを分析した研究結果(下記リンク)を2020年に発表した。
論文リンク:Is Sensory Loss an Understudied Risk Factor for Frailty? A Systematic Review and Meta-analysis
視覚、聴覚、嗅覚、味覚の4つの感覚障害とフレイルの関連を調査した結果、視覚と聴覚にはフレイルとの有意な関連が認められた。しかし、嗅覚と味覚の機能低下がフレイルに及ぼす影響については、研究が少ないことも判明した。
嗅覚検査の重要性と今後の展望
今回の研究は、嗅覚低下が単なる加齢現象ではなく、健康全体の重要な指標であることを示している。アルツハイマー病やパーキンソン病、呼吸器疾患との関連が示唆され、嗅覚低下が早期の健康警告サインとなる可能性が高いと考えられる。
視力や聴力と同様に、定期的な嗅覚検査の導入が健康診断の標準になる日も近いかもしれない。嗅覚の衰えに気づいた場合は、単なる加齢と片付けるのではなく、認知機能や健康状態について医師に相談することが推奨される。
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