核施設への空爆は「トランプの手柄」を演出する自作自演の猿芝居。イランの報復攻撃を免れぬ米国「独断専行」の重い代償

 

「イスラム体制変換」からシレッと表現を変えたトランプ

現実的に考えれば、イスラエルだけが相手でもイランに勝ち目はないのですから、そこに米軍まで出てくればイランは白旗を上げるしかありません。取りあえずはアメリカの言うことを聞いたふりをしておき、報復の機会を待つしかないのです。すでに空爆前に大型トラック16台が濃縮ウランを運び出した模様だと報じられていますが、今のイランに報復の力はありませんから、まずは停戦合意に乗り、トランプを持ち上げて経済制裁を解いてもらい、石油をガバガバ売って軍事力を回復させるとともに、移動した濃縮ウランで核開発を再開する。これが当座の目標でしょう。

ネタニヤフ首相は「核施設の破壊」だけでなく「イスラム体制からの転換」を二大目標としていましたし、トランプ大統領も今回の空爆前にイランの人々に「体制転換」を呼び掛けていました。しかし、空爆後、トランプ大統領は「我々はイランと戦争するのではなく核施設と戦っている」と言い、ヘグセス米国防長官も「今回の作戦はイランの核開発計画の破壊に焦点を当てたものであり、イランの政権転覆を狙ったものではない」とアピールしました。

ここでアメリカが「イスラム体制からの転換」に固執すれば、イランの最高指導者ハメネイ師が殉職覚悟で歯向かって来ると分かっているからです。そのためトランプ大統領は「イランの核開発を大幅に遅らせることに成功した」などと、当初の「完全破壊」からシレッと表現を変えたのです。

今回の空爆を受けて、イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」は、中東域内の米軍基地を標的にした報復を宣言しました。2020年1月3日、米軍が当時のイランの実力者だったIRGCのガーセム・ソレイマーニー司令官をイラクのバクダード空港付近でドローン攻撃で殺害した時、IRGCは5日後にイラク国内の米軍基地2カ所を十数発の弾道ミサイルで攻撃して報復しました。ですから、今回の報復宣言も現実となるでしょう。つまり、これから起こる様々な報復は、すべてトランプ大統領の独断専行の産物というわけです。

さて、G7では、イスラエル軍のガザ地区への「完全に度を超えた大量虐殺」に関しても、口火を切った「ハマスによる総攻撃」が原因であり「悪いのはハマスだ」という姿勢で一貫しています。開戦当初は日本のマスコミもハマスのことを「イスラム過激派」などと報じました。ハマスは選挙によってガザ地区の住民から選ばれた政府なのに、あまりにも偏った報道でした。

そのためあたしは、開戦直後の2023年10月11日に配信した『きっこのメルマガ』第234号に「ハマスの真実」という記事を書き、長年に渡ってイスラエルから弾圧されて来たパレスチナ自治区ガザの歴史を紹介しました。戦争に至るほど対立してしまった国と国の間には、現状を見ただけで簡単に判断することのできない負の歴史があるので、まずはその背景を知ることが重要だからです。

【関連】「ハマスだけが悪」は本当なのか?知っておくべき“世界標準の真実”

そこで今回は、とうとう米軍まで参戦してしまった現在のイスラエルとイランの戦争の根本的な原因を知ってもらうため、約半世紀に渡るイランの内政について書きたいと思います。

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