知っておきたい米国の戦略爆撃機についての予備知識
さて、今回イラン攻撃に使用された「B-2爆撃機スピリット」は、米空軍が保有する核爆弾搭載可能な戦略爆撃機“御三家”の1つである。
トランプ大統領は、上述のように「地上戦闘嫌い」であるかもしれないが、軍事的・経済的な力を見せつけて震え上がらせ屈服させることを躊躇わない時代錯誤の帝国的発想に囚われていることに変わりはないので、それらの混濁的な諸ファクターから合成されるベクトルとして、今後とも、今回のような米本土から“日帰り”のピンポイント爆撃が乱用される可能性がある。
そこで、B-2を含む米国の戦略爆撃機についての予備知識を整理しておく必要があると思うので、以下、米議会調査局の最新のレポート(25年6月18日付)要旨を紹介する。
米空軍は、通常戦争と核戦争のために爆弾や空対地ミサイルを搭載する戦略爆撃機(すなわち重爆撃機)としてB-52、B1B、B-2を配備している。これらの爆撃機は、重量兵器を搭載して長距離を飛び、長期間にわたり敵の戦術的・戦略的に重要な目標を攻撃する。
空軍はまた、次世代の新型ステルス爆撃機としてB-21を開発中で、これは核任務を遂行すると共に、電子攻撃や通信などの通常戦システムの構成要素の1つともなる。
爆撃機の役割は時代とともに進化してきた。第2次世界大戦を通じて米国は新型の爆撃機を開発し、数万機を製造した。
1942年から45年には、英国と共同でドイツの軍事・経済システムを破壊するための通常爆弾攻撃を実施した。また1945年8月には、ハリー・トルーマン大統領の命により米重爆撃機B-29が日本の複数目標に対し「これまでに実際の戦闘で使われた唯一の核兵器」を投下した。
冷戦期には、ソ連の爆撃機の卓越した能力が伝えられて米国の軍事費増大と爆撃機軍団の建造に拍車がかけられた。
今日、爆撃機は、米空軍の中核的な通常戦能力の1つである航空優勢〔確保〕の重要な構成要素となっている。航空優勢とは、敵の航空およびミサイルの脅威による妨害なしに〔我が方が〕作戦できるよう航空空間を制御できる程度のことである。爆撃機は、長距離の精密攻撃を行う能力を提供することで航空優勢任務を支援する。
2022年の米国核態勢調査(議会が命じる米核政策について定期的な調査)では、「爆撃機は、地上発射の長距離大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射の長距離弾道ミサイル(SLBM)と共に、米核戦力“御三家”の不可欠の一部である」ことが再確認されている。
また2018年の同調査では、「重爆撃機は、“御三家”の中でも最も柔軟性に富み、すぐに使える脚である」とされている。さらに2010年の同報告は、「重爆撃機はすぐに使えるよう前進配備され、それゆえに危機に際しての米国の決意と関与の意志を示すものとなる」と述べていた。(中略)
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46機が核兵器搭載可能の1955年に配備された長距離重爆撃機









