国内法上も国際法上も何の根拠もない無法な軍事力を行使
第3に、これは度し難い原始的とも言える帝国主義の行動様式で、「日帰りピンポイント空爆型」というのはその帝国主義が採用したたまたまの戦術である。
イラン空爆は(今に始まった事ではないが)米国憲法違反である。憲法上、戦争を宣言できるのは議会だけで、大統領は軍の最高司令官ではあるけれども、議会の承認なしに勝手に戦争を始めたり拡大したりすることはできない。唯一、米国がすでに侵略され直ちに対処しなければならない場合が例外だが、今回のイランはそれに当てはまらない。
国際法上は、言うまでもなく、国連憲章第2条の「すべての加盟国の主権平等の原則」(1項)、「国際紛争を平和的手段による解決」(3項)、「国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使の禁止」(4項)など国連の根本原理に対する違反である。
簡単な話、米国がイランにこうすることが許されるなら、イランが米国に同じことをしてもトランプは文句が言えないということである。
ところが、ウーナ・ハザウェイ=米国国際法学会次期会長によると(NYタイムズ6月26日付オピニオン)、今のトランプが採用しているのは「ブッシュ・ドクトリン」――米国が脅威を察知した時には先制的に武力行使することができるという外交政策姿勢である。
これこそが大量破壊兵器の使用を阻止するとして発動した2003年の悲惨なイラク戦争の中心的な法的根拠とされた代物である。しかも、この時でさえブッシュ・ジュニアは、議会の承認を取り付けたし、国連安保理の承認も得ようとした。
トランプはそれをも遥かに飛び越えて、国内法上も国際法上も何の根拠もなしに無法な軍事力を行使した。というのに世界は、そのことを問うことなく、ただ単に爆撃が成功だったかどうかに関心を集中していて、異様である。
この記事の著者・高野孟さんのメルマガ









