米国向け輸出はわずか12%。浙江省義烏市の実状
しかし、多くの生産者が米国からは軸足を移そうとしています。読者のみなさんもよくご存知の浙江省義烏(イーウー、ぎう)市は、街ごと日用品の巨大卸売市場になっています。この義烏市の2024年の輸出額は6947.5億元(約14兆円)というものでした。
その内訳を見てみると、米国向けはわずか12.0%にすぎないのです。

義烏市の2024年の輸出額の国別シェア。義烏市でも米国向け輸出は836.0億元、12.0%でしかない。単位:億元。義烏市の統計より作成
すでに最大の市場は一帯一路を利用した欧州と中東市場になっています。米国はすでにアフリカよりも少なくなっています。
私も教えてもらってかなり驚いたのですが、義烏市の中心的な卸売市場「義烏国際商貿城」には約7.5万軒の卸業者が参加していますが、そのうち米国向け輸出を行っているのはわずか3000軒で、米国専門の輸出業者はわずか100軒ほどしかないというのです。
この義烏国際商貿城で買い付けをするには、ガイド兼通訳を雇い、スクーターの後ろに乗って、あちこちの卸業者を訪問して交渉をしなければなりません。とても疲れる仕事で、夏などは身体中が汗でドロドロになる重労働です。先進国のバイヤーはそういう仕事を嫌います。
ではどうするかというと、バイヤー向けのサロンがあるのです。エアコンが効いていて豪華なソファが用意されているサロンで、美しいママさんから商品の紹介を受けて、そこで買い付けを決めてしまいます。商談が終わるとそのままお酒と若い女性が出てくるようなところです。
ここのママさんは顔が広く、さまざまな卸業者と関係があるために商品を紹介することができ、紹介料をもらうというビジネスをしています。義烏市では、大量の億万長者が生まれていますが、その多くはこのようなサロンの経営者です。
もちろん、国際商貿城で直接買い付けるよりもかなり高い取引価格になるのですが、中国製品は安いために、先進国では紹介料が乗っかってもじゅうぶん安いのです。そのため、先進国向けの卸業者は、こういうエコシステムを構築しているところに限られるため、数としては非常に少なくなります。
つまり、義烏市でも米国向け輸出はもともと少し特殊なビジネスであり、多くの卸売業者は、今では中東とアフリカに注目しているそうです。(次ページに続く)
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