乱暴な言葉と空疎な議論。参院選が置き去りにした「人へのまなざし」

 

「高齢女性は子供を産めない」という第一声に対して大手メディアは一斉に取り上げた。

それを「切り取りだ」と非難するSNSの言動もあれば、その発言に違和感を唱える人もいる。

本人は「生物学的なことを言っただけ」との見解である。

この発言は自らの公約や考え方を強調するために言ったのだから、発言者は切り取られようが、主張であれば意に介することはないだろう。

その主張に賛同するのであれば、投票で支持すればよい。

ただ、ケアを追究する立場として私個人は違和感を覚える発言ではある。

その言葉によって、傷つく人が現実的にいることを想像してしまうからであり、傷つく人を増やす社会認識を助長してしまう発言と受け止めている。

産みたくても産めなかった人、もしくは産めないかもしれないと不安を抱えている人は、このような発言で社会認識が硬直化され、心理的圧迫が強化されていく。

国政政党として認識された公党の党首にはこの想像力を持っていてほしいと願う。

第一声でわざわざ「生物学的なこと」を発言する必要はないし、参政党の主張を説明するのに必然的な見解とも思えない。

障がい者雇用制度があるのは、障がい者を雇用するのに一定の枠を設けて、企業も障がい者も働きやすくするためだが、その前提を「障がい者はうまく働けない」と言ったら、傷つく人は多い。

同時に大きな批判となるはずだ。

この「うまく」は普遍的ではないし、先ほどの「高齢」も示す幅は広い。

政策を説明するのにあたって言うべきことは他にあるはずだ。

ケアの視点で見れば、想像力に欠ける発言は何も参政党だけではない。

党首討論や演説では、その一言一句に注目が集まる。

そこにはたくさんの乱暴な言葉が頻出している。

それが、マスメディアやSNSで「切り取られている」が、これは選挙期間の宿命であろう。

だからこそ、各党のリーダー、候補者には真の言葉が求められる。

発する言葉への反応を想像しながら、人を傷つけない言葉で、猛暑の選挙戦を務めあげてほしい。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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