パワーハウスとしての再興は望めない凋落を極める欧州
その半面、凋落を極めているのが欧州各国です。経済的なスランプに加え、トランプ大統領による攪乱と恐らく可能なまでのトランプシフトによって、欧州の安全保障をまだアメリカの動向・意向に依存する体制から抜け出せず、国際情勢におけるパワーハウスには成り切れていません。
フランスやスウェーデンなどはまだ高いレベルの軍事産業を抱え、最近発表されたようにフランスと英国が共同で核の傘を欧州全域に提供するという独特の影響力は残っているものの、完全にアメリカ離れもできず、方針が固まらないまま、ロシア・ウクライナ戦争の長期化は、欧州各国のimmobilityを浮き立たせ、首脳によるキーウ訪問やゼレンスキー大統領の招待など、外交面でのパフォーマンスはアピールするものの、同じような等距離戦略を米ロ中に対して取ってみても、トルコのようなポジティブな緊張感を作り出せていないのが現状だと思います。
フランスのマクロン大統領は就任当初から欧州独自の安全保障体制の構築を訴え続けてきましたが、最近まで他の欧州各国からの支持は受けられず、やっとメルツ政権になってドイツが積極的な方針を取るものの、NATO事務局長のルッテ氏のようにアメリカとの距離を縮め、アメリカへの安全保障の依存姿勢を変えたくない勢力や、独自安全保障の創立によるネガティブな経済的な影響を懸念する勢力が乱立するため、欧州が結束して実質的な影響力を発揮する場面はしばらく見ることができないかと思われます。
非常に能力の高い軍事産業を持つ地域体ではありますが、方針が一本化できるまでは、パワーハウスとしての再興は望めないというのが私をはじめ、多くの方たちの見立てです。
いろいろなところでデリケートな安定が崩れ、大小さまざまな紛争・内戦が勃発していますが、一般市民が苦しみ大きな被害に見舞われる中、なかなかそのような戦いを止めようという政治的な機運が起きないのはなぜなのでしょうか?
欧米諸国とその仲間たちは「法による支配の尊重」を掲げても、戦争ごとにダブルスタンダードを露呈しますし、多くが世界有数の軍事・軍需産業を抱える国で、停戦を訴える米国も、世界のweapon systemsを牛耳る地位ゆえに、戦争が長引けば長引くほど、様々な関係産業が潤うという構造が出来ていますので、本気で止めに行っていません。
ロシアはウクライナへの侵攻という国際法違反を侵し、広範囲で経済制裁に直面したものの、反欧米を掲げる国々の協力を得て経済的なネガティブインパクトが少なかったと言われていますが、ロシア経済を支える要因の一つが、戦時下経済における軍事産業への緊急投資を通じた雇用の創出・維持であり、アフリカ諸国を中心に行われている数々の内戦当事者への武器販売、旧ワグネルによる鉱脈の掌握などを通じて得ている隠れ収入です――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年7月18日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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