「暗黒」よりも絶望的。参政党が躍進した参院選が描き出す「薄暗い未来」という光なき日本の未来像

 

有権者が下した「国の破綻」を大きく引き寄せる判断

そんな中で、今回の結果は「出来過ぎ」と思えるぐらいに分散してしまい、そこには偶然もあると思いますが、仮にこの先も「衆院だけでなく参院も少数与党」で自公政権が続くのなら、この「大勢が野党という甘い汁に安住」する構図が続くことになります。この無責任な構図というのが、もしかしたら相当の期間続くかもしれず、そうなれば、今回の参院選はこれを決定づけたということになります。まさに気がついたら「薄暗い時代」というわけです。

更にこの「薄暗さ」を決定づけたのは、以下の3点です。非常に重要ですので、まず列挙しておきましょう。

「財政規律に関してはもっと緩めていいという選択がされた」

「人口減による労働力不足を移民で補完する政策は、根本的なノーが突きつけられた」

「格差を直視するのではなく、敵を作って連帯するという陰謀論とイデオロギーの麻薬が大幅解禁されてしまった」

この中で最も重要なのは、財政規律だと思います。今回の選挙に至る「減税」か「給付」かという議論については、減税は恒久的で給付は一回きりという違いがある中で、給付論が負けたわけです。それだけ、国民の物価高あるいは実質購買力の減少への怒りが大きかったわけですが、同時に財政規律への関心といいますか、節度が壊れてしまったということが言えます。

これはポピュリズムに流れた野党が悪いだけでなく、財政破綻の恐怖についてしっかり説明ができなかった自民党にも大きな責任があります。そもそも、日本はGDPの2倍以上という先進国の中で最大の国家債務を背負っています。ですが、この債務は国内の個人金融資産とチャラになっていて、国としては国外から借りていないので大丈夫というのが、過去の自民党や財務省の説明でした。

ですが、財政への節度を失っていけば、やがて日本は世界から金を調達しなくてはならなくなります。そうなれば、日本という国の経営状態が厳しく審査されて、その国債が評価されていきます。今は、日本の金利が低いので日米の金利差が大きい、そこで円安になっています。ですから金利を上げると円高になるという状態です。

ところが、ある臨界点を過ぎると「金利を上げないと金が借りられない」ということになり、金利を上げれば上げるほど円が下がっていくことになります。勿論、円が下がればドル建ての借金は小さくなるのですが、その効果は限定的であり、とにかく金利が上がって円が下がります。そうなれば、エネルギーと食料を輸入に頼る日本では物価はどんどん上がります。いわゆるハイパーインフレになります。

そうこうするうちに、日本という国全体がドルで見たらどんどん小さくなり、日本国内の「優良な会社や優良な不動産」は外資に買われていきます。また国内の資産家は資産を海外に移転するようになります。その先には国債が返済できなくなる、つまり国家破綻がやってくるわけです。

この国家破綻を避ける、これはどの国にとっても最前提の国策です。ですから、石破政権は消費税制度を維持することにこだわったのですが、今回の選挙ではこの構想にはノーが突きつけられてしまいました。ということは、2011年から2012年にかけて当時の野田政権と自民党、公明党の間で交わされた3党合意が崩壊したということになります。

では、3党合意の際に掲げられた「安心できる社会保障」はどうなったのかというと、出生率は当時の見込みと比較すると破滅的に悪化しているわけです。そうなると、年金も健保も更に破綻が近くなっているわけです。そうした全ての問題を全く議論しないで、とにかく物価高なので消費減税ということが民意として出てしまいました。これは事実上、国の破綻を大きく引き寄せる判断だと思います。

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