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中島聡が大胆提言。日本企業はAI・ロボット時代でも世界に存在感を示すことが可能な「2つの戦略」で勝負せよ!

バブル経済の崩壊以降、すっかり国際競争力を失ってしまったと見なされている日本企業。しかし著名エンジニアの中島聡さんによれば、部品やセンサー等の分野では「世界の最先端」を走る企業が数多くあるのが我が国の特徴だと言います。その強みを生かすため、日本はどのような戦略を取るべきなのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で中島さんが、そんな企業を「AI時代に重要な役割を持つ存在」とするため試みるべきアプローチを考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:AI・ロボット時代の日本企業

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

立ち位置と強みを生かす。AI・ロボット時代の日本企業

少し前にも触れましたが、人間よりも賢くなりつつあるAI、および、その後に幅広く普及するだろうロボット(人型ロボット、自動運転車、自立型ドローンを含む)が世の中を大きく変えることは明らかです。そこで、日本として、日本企業として、もしくは日本の技術者として、どんな戦略で、どこで勝負すべきかは、とても重要なテーマです。

「日本からはGAFAのような企業は誕生しない」「最先端のAI技術で、今から日本が勝負することは資金的に無理」と悲観的になっていても仕方がないので、日本の立ち位置・日本の強みを生かした戦略を立てる必要があると思います。

日本の強みと言えば、やはり勤勉な技術者・労働者によって支えられて来た「モノづくり文化」です。トヨタ自動車の「カイゼン」に代表される、末端の作業員にまで浸透する「より良いものを作ろう」という姿勢が、日本の高度成長期を支えて来ました。

スマホ、クラウドサービスなどの最終製品に関しては、米国のIT大手に市場を奪われてしまっているものの、いまだに、部品・素材・センサーなどでは、世界の先端を走る企業が数多くあるのが日本の特徴です。

立ち位置としては、良い面・悪い面の両方があるものの、米国から信頼されているパートナーである点はとても重要です。グローバル化が進んだ結果、日本は多くの市場を中国や台湾に奪われてしまいましたが、「台湾の併合」を目指す中国と、それに反対する米国間の緊張が高まるにつれ、中国・台湾への高い依存度が大きなリスクであることを米国が認識したことは、日本にとっては大きなチャンスだと私は見ています。

そんなことを考えていた時に、目にしたのが、東洋経済オンラインの「台湾が『日本の電子部品』を欲しがる理由。台湾企業による日本企業のM&Aは新フェーズに突入」という記事です。

温度変化によって電気抵抗値が変わる半導体、サーミスタを用いた温度センサーの専業メーカーで、温度センサーで世界シェア約13%と首位を走る芝浦電子が、台湾の電子部品大手、ヤゲオ(国巨)によって買収されようとしていることを報じる記事です。

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総合商社が中堅企業のロールアップを行うというアプローチ

数年前までは、私は、台湾企業による日本企業の買収には賛成でした。鴻海によるシャープの買収が良い例で、「経営陣が大半を占める取締役会、サラリーマン経営者、株の持ち合い」などにより真っ当な企業統治が機能せず、優秀な技術者が有効に活用されていない日本企業は、台湾企業による買収のようなショック療法を受けた方が良いと考えていたのです。

しかし、「台湾リスク」が高まるにつれ、それが必ずしも良いとは言えないように感じるようになったのです。

決して、中国や台湾が嫌いなわけではありませんが、中国・台湾に頼らなければ、ロボットやドローンはもちろんのこと、AIの頭脳である半導体ですら作れない状況は、地政学リスクが高すぎると思うのです。

この記事にも書かれている通り、日本には、芝浦電子に代表される「高い競争力は持っているものの、成長機会を逃している」中堅・小規模の日本企業は数多くあり、それらが買収の対象になるのは、経済原理から考えて当然です。

しかし、そんな形の「企業のロールアップ(関連する業種の企業を複数買収し、統合することで市場シェアを拡大する戦略)」を行う力(資金力・胆力・ビジョン)を持つのが台湾企業ばかりというのは、情けない話だと思います。

ちなみに、日本には、日本政策投資銀行という仕組みがあるにはありますが、これは「雇用を守る」という大義名分の元に大企業から不採算部門を切り出して救済するなど、政治的な道具となってしまっており、あまり期待しない方が良いと思います(参照:「日本政策投資銀行はゴミ溜め」)。

日本の場合、逆に、海外での営業能力を持つ総合商社が、政府の力など借りずに経済原理に基づいて中堅企業のロールアップを行い、AI・ロボット時代に重要な役割を持つ企業として育てる、などのアプローチも悪くないのではないか、と妄想しているところです。

(本記事は『週刊 Life is beautiful』2025年7月22日号「AI・ロボット時代の日本企業」の一部抜粋です。「Windsurfの買収劇」や「私の目に止まった記事(中島氏によるニュース解説)」、読者質問コーナー(今週は13名の質問に回答)などメルマガ全文はご購読のうえお楽しみください。初月無料です ※メルマガ全体 約1.5万字)

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image by: Shutterstock.com

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