中年男性の“恨み”が大結集。神谷代表の参政党が成功した「氷河期世代の不満」取り込みと「支持基盤の限界」という課題

 

2025年参院選躍進の背景と課題

今回の参院選での14議席獲得は、神谷氏の政治的集大成とも言える成果だった。とくに「日本人ファースト」というスローガンは、外国人労働者問題や移民政策への不安を抱く有権者の心理に訴えかけた。

朝日新聞の出口調査によると、参政党支持者の60%が男性で、40代・50代の就職氷河期世代が中心となっている。これは、長期的な経済停滞と社会変化に対する中年男性の不満が結集した結果とも解釈できる。

しかし、この支持基盤は同時に限界も示している。60代以上の高齢者からの支持は相対的に薄く、女性の支持率も40%にとどまっている。幅広い国民的支持を得るには、さらなる政策的洗練が必要だ。

今後の国会戦略──連立政権への現実的可能性

神谷氏は参院選後の記者会見で、次期衆院選での40議席獲得を目標として掲げた。この数字は決して非現実的ではない。現在の政治状況を考えれば、多党制による連立政権が常態化する可能性が高く、参政党が「キャスティングボート」を握る可能性もある。

神谷氏の言及する「4~5党による連立政権」構想は、欧州では一般的な政治システムだ。日本でもこうした多党制連立が定着すれば、参政党のような中規模政党の影響力は飛躍的に高まる。

ただし、政権参加を目指す上では、これまでの一部の極端な主張を修正する必要もある。反ワクチン論や陰謀論的な発言は、責任ある政治勢力としての信頼性を損なう可能性がある。

評価と展望──現代政治への問題提起

神谷宗幣という政治家は、現代日本政治の光と影を同時に体現している。地方議員から出発し、挫折を重ねながらも独自の政治思想を貫き、最終的に国政で大きな影響力を獲得した軌跡は、ネット時代の民主主義の可能性を示すものだ。

しかし同時に、その過程で見せた森友学園との親和性、極端な保守思想、陰謀論への接近などは、現代政治の病理をも映し出している。

神谷氏の成功は、既存政治システムへの不信と、新しい政治参加の形への渇望を反映している。SNSを通じた直接的な政治発信、「政党DIY」という草の根的な政治運動、既存メディアに依存しない情報発信など、参政党の示した手法は今後の政治のあり方に大きな影響を与えるだろう。

一方で、その政治手法には危険な側面もある。感情的な訴求力に依存した政治、検証困難な情報の拡散、排外主義的な傾向などは、民主主義の健全性を損なう可能性がある。

神谷宗幣氏の今後の政治活動は、これらの問題をどう克服し、より大きな政治勢力として成長できるかにかかっている。参政党の躍進は、日本政治の新たな可能性を示すと同時に、その限界をも問いかけている。

現在47歳の神谷氏には、まだ長い政治人生が残されている。その選択次第で、日本政治の未来は大きく変わる可能性がある。彼の政治的成熟度と判断力こそが、参政党ひいては日本政治の行方を左右する鍵となるだろう。

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(『上杉隆の「ニッポンの問題点」』2025年7月26日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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