「戦後80年談話」に向けすでに始まっている右翼の策謀
石破がもし「戦後80年」問題で何か決起するのであれば、それは吉田茂、石橋湛山、田中角栄、大平正芳から細川護熙を経て村山富市、小渕恵三、鳩山由紀夫へと連なってきた保守リベラルの流れの中に身を投じ、「安倍政治」の悪しき遺産を断ち切る覚悟を示すことになるのだろう。今更怖いものは何もないだろうから、思い切り開き直ってそのように振舞ってほしい。
細川は今週の『サンデー毎日』8月3日号「倉重篤郎のニュース最前線」でインタビューに応じ、「細川政権で世の中はどう変わった?」と問われ、こう答えている。
▼一番の仕事は、先の大戦を侵略戦争だと明言したことだと思う。……戦後50年の村山富市首相談話にも繋がり、アジア各国の信頼を繋ぎとめることができた。
▼問題はこれからだ。世代が変わり、戦争の実体験への記憶が失われ、ウクライナ、ガザ戦争や米のイラン攻撃を目の当たりにして若い世代がどう反応するか。日本の歴史がどこでどう間違ったのか、この機に改めてしっかり考え抜いてもらいたい……。
その通りで、石破には、党内の状況もマスコミ環境も厳しいけれども、自分の方から崩折れてしまうような野垂れ死にだけは避けて、頭をもたげて、やれるだけのことはやり抜いた上で堂々と戦死を遂げるようにして頂きたい。
ちなみに、『月刊日本』8月号に菅野完が「石破内閣は戦後80年決議で有終の美を飾れ」と書いている。50年の村山談話は、当時の加藤紘一=自民党政調会長が文案を作り、それを村上正邦=参院自民党幹事長(生長の家の右翼活動家出身=故人)が受け取って待ち構えた椛島有三(日本を守る会事務局長=当時、現日本会議事務総長)や中川八洋=筑波大学教授ら右翼活動家に見せ、彼らが文句を付けて突き返すということを繰り返したが、最後は加藤や野中広務(当時自民党幹事長代理)らが上手く立ち回って村上に日本の侵略責任を認めるかの文言を呑ませてしまう。
椛島らは激怒するが後の祭りで、それで仕方なく戦後60年の際に、安倍晋三首相に日本の行為を侵略とは認めない談話を作らせてリベンジを果たすのである。さて今回も右翼の策謀は始まっていて、これを阻むことができるのは石破である。
つまり、これも、「安倍政治の悪しき遺産」を綺麗サッパリ清算してその呪縛から日本を解放できるのは誰かという問題の大事な一部なのである。
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