前任期中に二度、北朝鮮の金正恩総書記との会談を実現させるも、成果を上げることなくホワイトハウスを去ったトランプ大統領。そんなトランプ氏の「リベンジ計画」が囁かれていることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』では著者の有田芳生さんが、韓国政府筋で広がっている「トランプ大統領の10月訪朝情報」を紹介。その実現度を韓朝両国の直近情勢とトランプ氏の思惑を勘案しつつ考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:トランプ大統領の10月訪朝計画は実現するか
トランプ大統領の10月訪朝計画は実現するか
トランプ大統領が10月に北朝鮮の平壌を訪問する。韓国政府筋でそんな情報が広がっている。
北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長が7月28日に談話を発表した。韓国に李在明(イ・ジェミョン)政権が6月4日に発足して初めての公式見解だ。談話は統一をめざす同一民族の分断国家ではなく「敵対的な二つの国家関係」とし、それまで「南朝鮮」と言っていたものを「韓国」に、「南北関係」を「朝韓関係」に変えた。
一方、李大統領は同日に行われた鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相の任命式で「平和的な雰囲気のなかで南北間の信頼を回復することが重要だ」と発言した。
金副部長による南北関係に批判的なコメントが注目されたが、同日に公表された米朝関係に関する談話に注目すべきだ。「わが国の核保有国としての地位を否定するいかなる試みも徹底的に排撃される」としながら、「核を保有する二つの国が対決的な方向に進むことが決して有益ではないという事実を認識する最小限の判断力はなくてはならない。そうした新たな思考を基盤に、他の接触の入り口を模索するのがよいだろう」とある。非核化交渉でなければ対話に応じると解釈できる。
談話は金正恩総書記とトランプ大統領の「個人的な関係が悪くないという事実を否定したくはない」とも述べている。7月28日に韓国とアメリカについての談話をそれぞれ出して、一方は対話を拒否、一方は対話の道を示し、核保有を認めさせる軍縮交渉を呼びかけている。
韓国政府筋ではトランプ大統領が10月にも北朝鮮の平壌を訪れて金正恩総書記と3回目の会談を行う可能性があると見ている。
歴史的な初会談は2018年6月12日にシンガポールで、2回目は2019年2月27日にハノイで行われた。ハノイ会談で金総書記は寧辺の核施設の廃棄を提案したが、トランプ大統領は濃縮ウラン製造の秘密施設の廃棄を求め完全な非核化を求めたため決裂した。
その後も両者の個人ラインは確保されており、復活したトランプ大統領は、にわかには信じられないものの、ノーベル平和賞を狙って、ロシアのウクライナ侵略戦争の停戦などで動いてきた。その思惑の延長で北朝鮮訪問が計画されているという。
目的は1950年にはじまり1953年に終わった朝鮮戦争の休戦協定を平和協定にするためだ。米朝国交正常化や前段階として相互に連絡事務所を設置する構想もある。
日本の北朝鮮政策でいえば、石破茂総理は持論として連絡事務所の設置を必要としている。だが国会内外の強硬派によって口にすることもできていない。もしトランプ政権が国交正常化の方向で動けば、日本の政界にも影響が及ぶだろう。
「救う会」や「家族会」の強硬派が連絡事務所の設置に反対するのは「北朝鮮の時間稼ぎに利用されるだけだ」という。2002年9月17日の小泉訪朝から23年。結果的に何の成果もない現実にあって、いまさら「時間稼ぎ」もない。外交交渉の基本を知らない暴論である。
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