核使用を含め何が起きても不思議ではない中東情勢
「国家を預かる者の責務、国民にとっての生存に対する脅威の除去こそがリーダーの責務」と訴えかけて、現在、無差別殺戮が行われているのが、言い過ぎかもしれませんが、イスラエルによるガザ壊滅作戦であり、パレスチナに対する後戻りできない戦いであり、シリアやレバノンに対する武力介入であり、そして宿敵イランへの攻撃と言えるのだと思います。
ハマスが2023年10月7日に行ったことや、その後、人質の生命を犠牲にしていること、そして数日前に国際的に流されたイスラエル人人質の悲惨な現状などは、どのような理由があっても決して許される行為ではありませんが、その後のイスラエルの反応は過剰という表現では言い尽くせないほどの残酷なものであると考えます。
そしてそれを利用したイスラエルの奥底に根付く対パレスチナ、対アラブの心理が政治的に利用され、今、ネタニエフ首相と政権による超強硬姿勢を後押しすることに繋がっていると見ています。そこには「イスラエルは絶対に負けない」という信念を支える核兵器の存在があります。
「アメリカはいずれ離れるかもしれない。でも我々には究極の防衛兵器、防衛力がある」
10月7日以降、イスラエルの高官と協議した際に出てきた表現ですが、その“究極の防衛兵器”が具体的に何を指すのかは言ってはくれませんでしたが、尋常ではない覚悟が宿っていることをひしひしと感じました。
パレスチナにイスラエルが核を用いることはないと考えますが、今週、ネタニエフ首相が行う“限定的な安全保障協議”においてガザ全域をイスラエルが占拠し(「敵の打倒」と「ガザがイスラエルの脅威に再度ならないことが大事」との目標設定)、ヨルダン川西岸地域の完全制圧まで目指す方針が示された場合には、これまでギリギリのラインでイスラエルに対する攻撃を思いとどまってきたアラブ諸国が、国内の声に押されて、一気に徒党を組んでイスラエルに戦いを挑むような事態になった場合、核の使用が作戦のテーブルに上がらないということは、誰も保証できないと思われます。
「自らの生存の確保のために持てるものはすべて活用する」ことがイスラエルの方針であれば、何が起きても不思議でありません。
それに比べると、米国やロシア、中国の核はまだ厳しい管理下に置かれ、使用のためのハードルはかなり高いと言えますが、今後、インドとパキスタンのいざこざが再噴火したり、中印が偶発的な衝突を起こしたりした場合、そして北朝鮮が暴発するような場合には、核兵器が現実的な兵器として、作戦上に現れるかもしれません。
この恐ろしい戦争の連鎖を止めるためには、現存の危機の種を早く収め、解決に導く必要があります。
それがタイとカンボジアの武力衝突であり、ロシアとアゼルバイジャンの間で燻る武力衝突の可能性です。
今、どちらのケースも国民感情が高まり、政府が行う懲罰的な戦いを容認する空気が生まれていて、それがいつさらなる紛争の勃発に繋がるか分からない状況になってきていますが、これらが本格的な戦争に発展した場合には、イスラエル絡みの紛争から中央アジア、ロシア・ウクライナ戦争に繋がり、カザフスタンからスタン系の国々を通り、最後はインド南端に及ぶ回廊を伝ってインドとパキスタンの紛争に繋がるだけでなく、南シナ海で高まる中国とその他の国々との緊張の高まりが武力衝突の連鎖に発展することになるかもしれません。
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