決して忘れてはいけない「戦争は儲かる」という事実
現在、中国については、フィリピンやインドネシア、ベトナムという潜在的に衝突しかねない国々があることを認識し、インドとの不必要な衝突も回避する方針が取られており、中国の安全保障上の関心は台湾海峡を巡るアメリカとその仲間たちの出方に集中しているようですが、戦争の連鎖が意図せずに南下してくる場合には、中国も戦争の輪に巻き込まれることになり、そうなると何が起こるかわからないだけでなく、日本も確実に直に巻き込まれることになりますし、第3次世界大戦という“お化け”が現実になると思われます。
実際のこのような究極のシナリオになるかどうかと問われれば「ありうる」と答えますが、同時に「でもその可能性はかなり低いと考えている」と答えます。
私はただの紛争調停官ですので決してすべてを知っているわけではありませんが、いろいろなやり取りを通じて感じることは、これらのシナリオの源になっているのは、【誰かによって意図的に作られた脅威とその強調】ではないかということです。
最悪の事態を考えればキリがありませんし、なぜか私たちはそのような時に非常にクリエイティブになってしまうのですが、戦争は非常に儲かり、危機の存在の強調は防衛力の必要性と軍の存在意義をクローズアップすることに繋がることも忘れてはなりません。
アメリカの軍およびペンタゴンが議会の公聴会で定期的に繰り返し強調したロシアの脅威も、中国がアメリカを凌駕するという脅威も、これまでのところアメリカ合衆国の国家安全保障を脅かすものとして現実のものにはなっていませんが、その脅威が強調される度にペンタゴンと軍は予算を獲得し、軍備を拡張しています。
それはアメリカだけでなく、欧州各国もそうでしょうし、賛否両論あるでしょうが、日本の自衛隊を巡る予算措置も同じだと考えます。
「備えあれば患いなし」
これは防災にも防犯にも、そして国防においても事実であると思います。しかし、国防・防衛の拡充にフォーカスした場合、一体、私たちは具体的に何に対して備えを拡充させているのでしょうか?
相互に相手に危機意識を持ち、脅威に感じるスパイラルが固定化することで、国々は防衛費の拡充に走り、それが各国の軍拡につながり、そして究極には核戦力の拡充と非核であっても非常に高い殺傷能力を持つ兵器の開発と拡充へと繋がります。
このような事態を眺めつつ、背後でほくそ笑むのは誰でしょうか?
兵器産業の皆さんとそこから利益を分け与えられているリーダーたちです。
余談になりますが、毎年2月に私は2つの全く違った会議に呼んでいただいています。1つは皆さんもご存じのミュンヘン安全保障会議(MSC)、そしてもう1つがトルコ・イスタンブールで開催される通称武器フェアです。
前者では各界のリーダーたちが国際安全保障の確保について話し合い、どのように協力できるのかが議論されますが、その次週に開催されることが多い“武器フェア”では、最新鋭の武器・システムなどが所狭しと並べられ、世界中の武器商人とその顧客となる各国の軍のリーダーたちが真剣に商談を行っています。
非常に不思議な光景なのは、そこに米中、米ロなどの緊張もなければ、イラン、北朝鮮などの軍の幹部も同じ空間におり、挨拶を交わしています。
そして講演などではいかに最新鋭兵器が世界の安定を“戦争抑止力”として守っているかが説かれます。
私は毎回、違和感を臆することなく表明し、講演やパネルなどでも考えを表明するのですが、2月のジレンマは毎年続き、それと並行してロシア・ウクライナ戦争は長期化し、ガザでは悲劇が拡大し、様々なところで争いの種が拡大しています。
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