“オオカミ少年現象”の危険も。カムチャツカ地震の「津波警報」が“今後の注意報や警報を軽視”の懸念

September,16,,2019,,Ito,,Japan,,Tsunami,Evacuation,Sign,In,Japan
 

7月30日に発生したカムチャツカ地震に伴い、日本列島の広い範囲に発出された津波警報。各地で大混乱を引き起こす結果となり、気象庁の判断を疑問視する声も上がることとなりました。今回のメルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野晃一郎さんが、この「騒動」を振り返り警報発出の是非を考察。さらに自身が感じる「懸念」を記しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:カムチャツカ半島での地震による津波騒動で感じたこと

プロフィール辻野晃一郎つじの・こういちろう
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

カムチャツカ半島での地震による津波騒動で感じたこと

さて、本日このコーナーでの本題は、7月30日の朝、カムチャツカ半島で起きた地震による津波騒動に関しての一言です。

この地震による津波が日本にも到達する恐れがあるということで、気象庁は太平洋沿岸を中心に直ちに津波注意報を発令しました。その直後、北海道から和歌山県までの太平洋沿岸には最大3メートルの津波が到達する可能性があるとして、対象地域に対しては津波警報に切り替えました。

注意報や警報で避難行動をとった人の数は190~200万人と推定されていますが、多くの公共交通機関が止まって帰宅難民も発生し、海沿いの観光地などでは営業を見合わせる商店や施設なども続出しましたので、全体としては国民生活に多大な影響を与えたといえます。結局、すべての注意報や警報が解除されたのは、丸一日以上を経た翌31日の夕方でした。

もちろん、津波の恐ろしさは、2011年3月11日の東日本大震災の時の体験や光景としてすべての日本人の脳裏に焼き付いていると思います。地震の初期の段階で、最悪の状況を想定し、逸早く注意報や警報を発令すること自体は悪いことではありません。

しかし、今回のケースでは、結果的に、日本で最も大きな津波が観測されたのは岩手県久慈港の1.3メートルで、多くの地域では数十センチ程度のものでした。今回のカムチャツカ半島での地震による津波の日本への影響や被害はなかったのです。

本件であらためて感じたことは、気象庁としては、最悪の事態を想定して注意報や警報を出すことは必要であるし、その行為自体は理解できるものの、「煽り過ぎ」というような批判もやむを得ないのではないか、ということです。

実際、三重県熊野市では、結果的には無用だった避難をする途中、車が崖から転落し、運転していた女性が亡くなるという死亡事故が1件発生しています。

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