結果論と言ってしまえばそれまでですが、列車、航空機、フェリー、バスなど、多くの公共交通機関が運行を見合わせたり、寄港できずに混乱や影響が広がったのは、地震や津波が直接の原因ではなく、注意報や警報といった人為的な行為によるものです。
人命を最優先する観点から、交通機関各社には非常時における運行を判断する基準が設定されているものと思いますが、危機管理のガイドラインはこのままで良いのでしょうか。各社横並びで一斉に運行を見合わせるところにもやや違和感を覚えました。中には運行を継続する独自の判断をする交通機関があっても良さそうに思いました。
さまざまなリモートセンシング技術やAI技術も発達していますので、津波の大きさや影響範囲については、本来もう少し精度の高い予測が可能なのではないでしょうか。気象庁の技術レベルに対する疑念や、官僚体質が高じているのではないかなど、さまざま邪推してしまいます。
今後もこのようなことが続くことになれば、「オオカミ少年現象」とでもいうべき事態、すなわち、人々が注意報や警報をあまり信じなくなり、いざという時に軽視して、被害に巻き込まれるリスクを逆に高めてしまうようなことにもなりかねないのではないかと心配になります。
(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年8月8日号の一部抜粋です。「戦争を考える(2)」と題した「今週のメインコラム」、「知覧特攻平和会館」を紹介する「今週のオススメ!」、「特別会計の闇」に触れた「読者の質問に答えます!」、映画『火垂るの墓』を取り上げた「スタッフ“イギー”のつぶやき」を含むメルマガ全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)
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