確実に見放され「のけ者」にされる欧州各国
割を食うのはウクライナと欧州でしょう。
ウクライナについては、停戦は成立しても、領土の2割を失い、おまけにロシアの企てに屈したとのイメージがぬぐえないことから、今年に入って顕著になってきているゼレンスキー大統領の強権化への国内での非難の高まりと合わせ、ゼレンスキー政権は終焉し、さらに国内情勢は混乱を極めることになると思われます。
そうなった場合、ロシアが望んだように親ロ政権が成立し、ウクライナが事実上、ロシアの傀儡になる可能性も否定できない状況になります。旧ソ連の崩壊時のどさくさに紛れて独立したウクライナが、その姿を消すことにさえなってしまうかもしれません。
欧州各国については、いろいろと体裁を保つために口先だけの支援と介入を繰り返してきましたが、米ロ間でのディールが成立した暁には、ウクライナにおける欧州のプレゼンスは失われ、ウクライナ復興に関わる甘い経済的な汁から排除されることが予想されます。ウクライナの復興とロシア国内の再興は、アメリカとロシア、中国に託され、そこに欧州が入ってくる隙はないと思われます。
これについては、アンカレッジ前に、アメリカ政府が中国とインドにアプローチしているのが気になります。それはアメリカ政府が進めようとしているアラスカ州の液化天然ガス(LNG)開発を通じてインド太平洋地域におけるエネルギー供給網を拡大しようとしている戦略が背後にあります(そしてアラスカ州が今回の米ロ首脳会談の場に選ばれた裏の理由は、ロシアにこのプロジェクトへの参画を打診しているということがあります)。
インドについては、相互関税措置に対して真っ向から対峙してくるため、表向きは非難合戦に見えますが、アメリカとインドの間での経済的なディール・メイキングが成されており、そこにウクライナ案件が含まれているという情報が多数ありますし、インド太平洋地域におけるエネルギー共有網にインドを含めるという合意も含まれると思われます。
中国についても、表向きは関税協議ですが、ベッセント財務長官と何副首相との間の協議内容に“ウクライナの戦後復興についての案件”があり、どうもウクライナ復興における旨味を共有しようという意図が見え隠れします。このような見立てが正しいとしたら、確実に欧州は見放され、のけ者にされるということになります。
実際にトランプ大統領は「欧州は自分たちでは何もしないくせに、こちらが何かしようとしたら横やりを入れてくる。ご立派なことを言う割には、肝心な時には動かず、日和見になる」と非難しているという情報も多数存在し、トランプ大統領の対欧州フラストレーションの存在が鮮明になっています。
そしてイスラエル対応において、G7の共通認識(2国家共存という合意が出来た暁には、パレスチナを国家承認するという共通認識)を一方的に外れてパレスチナ国家承認というカードを持ち出したフランスと英国、カナダに怒り心頭のようで「いい格好をするためにG7の暗黙の了解を破った」と考えていることからも、欧州は信用ならないという考えのベースになっているものと考えられ、それがこのシナリオが成立する際のベースになると見ることができます。
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