プーチン案を丸呑みか、席を蹴ってウクライナと欧州に責任転嫁か。米ロ首脳会談でトランプが“演じ”そうな2つのシナリオ

 

ロシアが戦争を続けてくれることを望む中国の思惑

そしてロシアが戦争を続けてくれることは、中国にとってはアメリカの目と注意を中国から外しておくことに貢献してくれるので、「一刻も早い話し合いによる停戦を望む」と外交的には発言しつつも、背後で中国はロシアの継戦能力を支えているのが実情です。

ゆえに中国の観点からすると、15日のアンカレッジでの米ロ首脳会談で停戦が合意されることは、戦争が続くことに比べると、あまり望ましいとは考えられないものと見ています。

米ロが協力し、ウクライナ復興における経済的な利益を独占することを警戒していますし、ロシア・ウクライナ戦争が終わると、まだイスラエル案件が荒れまくっているとはいえ、アメリカの攻撃の矛先、特に軍事的な圧力の矛先が、中国に向くことを恐れています。

ただそれに対してのリスクヘッジも取られており、それが今回の米ロ首脳会談に先駆けてアメリカとの関税協議を連発し、対ウクライナ支援を手掛けるベッセント財務長官(政権発足後、最初にウクライナを訪れたトランプ政権の幹部)に対して、何副首相(経済担当)を通じて、水面下での調整を行うことで、ウクライナ案件を巡る不利益を中国が被らず、利益を分け合えるようにしていると聞いていることから、仮に米ロ首脳会談で何らかの合意が得られても、それが直接的に中国とロシアの関係に楔を打ち込むことにならないように手を打っているものと考えられます。

「8月15日の米ロ首脳会談はトランプ大統領の勇み足で失敗する」「トランプ大統領はすでにリスクヘッジを行っていて、失敗を見込んだ次の手を考えている」など、すでにアラスカ州・アンカレッジでの会談の“失敗”を匂わせ、別のリスクマネジメントをしているようにも見えますが、実際にはそれ以上の複雑なディール・メイキングが、ウクライナという当事者を外し、欧州各国を排除して進められ、新しい国際秩序の再構築に動いているものと思われます。

このメルマガが配信され、その後、米ロ首脳会談が行われた結果、私が書いた内容と全く違った方向に行く可能性は否定できませんが、どのような結果が出て、その後の動きが形成されるようなことになったとしても、今後の国際情勢の行方を占ううえで、いかにここがターニングポイントになったかと語ることになると考えます。

2025年8月15日は戦後80周年の節目ですが、世界平和と戦争の悲惨さに思いを寄せる日に、皆さんと共に「どのような平和を私たちは望むのか?」、「どのような世界を私たちは望むのか?」を鮮明にイメージする一助になればと願います。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年8月15日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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