「ボランティア活動」すら禁止する地方高校の校則も
4つ目は地域格差です。先ほど申し上げたように、首都圏では多くの子どもが中受をすることで、公立の中学校の体制が崩壊しています。そして、巨額な公金が私学の維持に流れています。一方で、多くの地方では公立中学から公立高校というルートでもキチンとした教育が受けられるようになっています。ですが、近年では「働き方改革」を掲げて、公立高校での受験教育を廃止する動きがあります。
どう考えても塾産業と経産省の陰謀としか思えないのです。ですが、近年の文科省は経産省とは喧嘩せず、むしろ21世紀の現代という時代に「ついていけない」部分は、経産省に依存するという体たらくですので、この流れになっています。
地域格差の大きいのが、いわゆる社会体験や教養体験の部分です。公立高校生のバイトが、大都市ではオッケーで、地方では禁止とか、全く理解不明ですし、とにかく同じ高校生であっても、大都市圏と地方では経験の幅広さなどに大きな格差が出ています。留学しようと思って、社会体験としてボランティア活動に参加しようと思ったら、地方の場合に校則違反で禁止されたなどという例もあり、全く笑えない話です。
こうした地域格差についても、文科省は全く問題視していないようで大問題だと思います。
更に問題なのは、大学進学における地域移動の減退です。地方を真に活性化するには、大学においては最先端に触れながら、就職は地元にUターンして地元の近代化に貢献する人材が多く出ることだと思います。ですが、現在は、経済的な面もあると思いますが、優秀な人材でも大都市に出ないというケースが増えているようです。
一方で、大学で大都市に出てしまうと、そのまま大都市で就職してしまい、地元には戻らない、という一極集中の悪い面を継続するだけのパターンも依然として多いように思います。
日本はせっかく、地方により文化も言語も異なるという多様性を有しているのですから、優秀な人材が地方で地方を改革するといったダイナミズムが起これば、潜在的には大きな変化が期待できると思います。ですが、構造的にはそうした人材流動の活性化は起きていません。これも大きな問題だと思います。
日本の教育の問題は、まだまだあると思います。引き続き、議論を続けていきたいと思います。予告として申し上げておくと、最大の問題は、大学までに学んだことが社会で役立つような、専攻とジョブ型雇用のリンクをどう実現するか、という問題です。言い換えれば、大卒時点でジョブ型の労働市場で競争力を持たえるには、という話です。引き続き、ご意見をお待ちしております。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年8月19日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「関西の球団では、どうして永久欠番が少ないのか」や人気連載「フラッシュバック80」もすぐに読めます。
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