ミツカン炎上ポストに謝罪を強いた日本とは真逆。米国で“リベラルとともに敗北”した「キャンセルカルチャー」の現状

 

アメリカでは「反ポリコレCM」が特大ホームランに

一方アメリカでは、ちょっとした言葉の使い方によって、企業のCMが大炎上し、マスコミを巻き込んでの大議論にまで発展したものの、日本とはまったく真逆の結末を迎えた。

発端は、今年7月23日に発表された、ファッションブランド「アメリカンイーグル」の広告だ。米国のドラマで人気急上昇中の女優シドニー・スウィーニーが起用された。

興味のある人はYoutubeで見てもらいたいが、肌を露出して横たわるシドニー・スウィーニーの下腹部から映像がはじまって、乳まわり、肩まわりへとカメラでなめていくエロい映像で、セリフはこうだ。

Genes are passed down from parents to offspring, often determining traits like hair color, personality and even eye color…My jeans are blue.

(遺伝子は親から子へと受け継がれる。髪の色や性格、目の色も遺伝子によって決められるの。 私のジーンズは青いのよ)

「Genes(遺伝子)」と「Jeans(ジーンズ)」をかけたダジャレだ。

同じシリーズで、爆乳の谷間へとカメラが異様にアップしていくものや、爆乳からお尻まで全身をぐりぐりなめまわすもの、ジーンズをへその下へずり下げて「これ、私のおしりが良く見えていいわ」と挑発的な笑みを浮かべるものなどシリーズがいくつもある。

いずれも、最後に男性の声で「SYDNEY SWEENEY HAS GREAT JEANS(シドニー・スウィーニーは素晴らしいジーンズを持っている)」というコピーが入る。

日本人からすれば、「ほう、アメリカのCMは攻めとりますなあ」など言いながら、黙ってガン見しまくって終わる話だと思うが、アメリカでは、この最後のコピー「SYDNEY SWEENEY HAS GREAT JEANS」が、「GREAT GENES(優れた遺伝子)」とも受け取れるように構成されていることが問題視された。

金髪に青い目の白人女優を起用して、遺伝子について説明するセリフを言ったあとに、「優れた遺伝子を持っている」と聞こえるコピーを放ったため、「白人至上主義の含みがある」「金髪碧眼のアーリア人を人類の頂点としたナチスの優生学を想起させる」と受け取られたのだ。

このCMは、とてつもない大炎上を巻き起こした。

一夜のうちに、エックス、インスタグラム、ティックトック、フェイスブック、ユーチューブとありとあらゆるSNSで拡散され、マスコミにも飛び火。 全国ネットの報道番組などからも総叩きに見舞われる。

これまでの「キャンセルカルチャー」の流れなら、CMは即刻中止、出稿元のアメリカンイーグルに対するデモに不買運動、出演したシドニー・スウィーニーも姿を消すまで叩き尽くされると予想されるところだ。

しかし、現実は逆だった。

ジーンズは爆発的に売れて、品切れ。 株価は一晩で17%上昇し、時価総額は500億円アップ。 シドニー・スウィーニーも大注目されることになり、特大ホームランのコマーシャルとなったのである。

泉美木蘭さんも寄稿する『小林よしのりライジング』

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