ミツカン炎上ポストに謝罪を強いた日本とは真逆。米国で“リベラルとともに敗北”した「キャンセルカルチャー」の現状

 

アメリカンイーグルは一切謝罪なし。キャンセルカルチャーの敗北

アメリカンイーグルは、一切謝罪しなかった。

それどころか、「私たちは、これからも、誰もが自分らしく自信を持ってアメリカンイーグルのジーンズをはく姿をたたえ続けます。素晴らしいジーンズは誰にでも似合うのです」という声明文を発表。

もちろん批判もあったが、この企業態度がさらに人気を得て、ブランドの公式インスタグラムのフォロワーは15万人近く増加したらしい。

メディアは、シドニー・スウィーニーについて調べ上げ、共和党員として登録されていた事実が報道されたり、過去のSNS動画から、射撃場で銃を撃つ姿が掘り起こされたりもした。

実際、一連のCMシリーズには、1960年代のアメリカを一世風靡したフォード車が登場するなど、「古き良き時代の俺たちと、金髪碧眼の白人美女」という共和党的なイメージを想起させるものもある。

トランプ大統領のスローガン「MAGA(Make America Great Again :アメリカを再び偉大な国に)」に寄せた部分があるのだ。

こうなると、トランプ大統領は大喜びである。

記者会見で「彼女の広告が大好きだ!」「シドニー・スウィーニーが共和党員なら、彼女の広告は素晴らしいと思う」とご機嫌で語ると、ホワイトハウスの公式SNSで「シドニー・スウィーニーの広告、もう見た~?」と後押しするポストまで投下。

https://x.com/WhiteHouse/status/1952885899093586368/photo/1

ほかにも、アメリカの著名人たちの大喜びの発言を紹介しよう。

ヴァンス副大統領は、論争を「共和党vs民主党」に見立てて、インタビューで皮肉たっぷりにこう語った。

「民主党が学んだ教訓は、『シドニー・スウィーニーが美しいと思った人を、ナチス呼ばわりして攻撃する』ということらしいね」

「民主党員の多くは、アメリカの基本的な生活に対する“敵意”を軸にしているんだ。だから、可愛い女の子がジーンズの広告に出ると、パニックに陥らずにはいられないんだよ」

ホワイトハウス報道官のスティーブ・チャンは、広告に対する批判を、「キャンセルカルチャーの暴走」と呼び、こう述べている。

「この歪んだ、愚かで鈍感なリベラルな考え方こそが、2024年に、アメリカ人があのような投票をした大きな理由だ。彼らは、このデタラメにうんざりしているのだ」

自身も金髪碧眼の白人女性である政治評論家のメーガン・ケリーは、自身の番組にて強い調子でこう発言。

「白人で金髪、青い瞳の人を祝うことすら許されないような、くだらない状況にはもううんざりなんです。過去5年間、そういう特徴を持つ人が部屋に入るときには、申し訳なさそうにしなければなりませんでした。この広告は、そうしたことをやめるという最終宣言のようなもの。それは、私たちが優れているという意味ではなく、他の人種や髪色、瞳の色の人より劣っているわけではないということです」

抑え込まれていた感情が、反動とともに一気に噴出している。ポリコレに対する逆襲と言ってもいいだろう。アメリカは、リベラルの敗北とともに、キャンセルカルチャーも敗北したというわけだ。

以前は、ジーンズをはく「反抗」の象徴と言えば、リベラルの若者だったかもしれないが、現在のアメリカは、そのリベラルに抑えつけられていた共和党派の若者こそが、「反抗」を見せる存在として勢いを持っている。

アメリカンイーグルは、その新たな潮流を的確にキャッチして、大胆な広告を展開し、見事に大成功したということだろう。シドニー・スウィーニーは、「意識の高い」リベラル系の広告を撲滅してくれたと称賛する声もあるという。

企業が即座に謝罪し、ひたすら萎縮する姿を見せるばかりの日本だが、水面下では着実に価値観の変化が起こりつつある。いつかこうした「逆襲」への転換が訪れるだろうか?(その2に続きます)

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