狡猾プーチンの強かな戦略。ゼレンスキーとの会談ほのめかせ攻勢激化まで時間稼ぎ、トランプの誘いに乗りアンカレッジにまで出向く独裁者

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8月15日の米ロ首脳会談の席ではゼレンスキー氏との会談の可能性について言及したにも関わらず、28日にはキーウに大規模な攻撃を仕掛けたプーチン大統領。この蛮行に対し各国から非難の声が上がっていますが、ウクライナ戦争の停戦・和平は実現するのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、さまざまな情報を総合し今後の展開を考察。さらにウクライナが困難な状況を打破するために考えうる手段を検討しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:アメリカの姿勢が左右する世界の紛争解決に向けたCredibilityと潜む大戦争の影

ウクライナの孤立無援。プーチンの攻勢を止められぬ国際社会の「外交的な舞台ショー」

「トランプ大統領はウクライナにロシア本土への攻撃を許容するか否か?」

「アメリカはウクライナに独自の長射程の弾道ミサイルFP-5(フラミンゴ)の使用を許すか?」

「アメリカがいう“ウクライナへの安全の保証”はどのような内容なのか?」

8月15日に行われたアンカレッジでの米ロ首脳会談と、その後、ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州各国の代表をワシントンDCに呼びつけて行われた首脳級会合のあと、ロシア・ウクライナ間の戦争の終結、つまり和平合意への機運が高まったと言われていますが、実際にはロシアの解釈とアメリカの解釈にはズレがあり、かつ欧州やウクライナの解釈ともズレが生じていて、和平に向けた見通しが立っていないのが現状です。

アメリカは「プーチン大統領がゼレンスキー大統領との首脳会談受け入れの意を示した」と発表すれば、すかさずロシアはラブロフ外相に「その可能性は否定しないが、首脳級会談を実施するためにはいろいろと詰めなくてならないことが多く、アメリカが言うような2週間以内というタイムラインは非現実的だ。そもそもそのようなデッドラインに合意した事実はない」と反論させ、高まる期待感に冷や水を浴びせかけました。

欧州各国とウクライナは「その首脳間の会談は行われなくてはならないが、その後、アメリカと欧州も交えた会議が開催されるべき」と主張し、これがまた混乱を生じさせています(ロシアには相手にされていません)。

そしてもう一つの要素である「ウクライナへの安全の保証」ですが、そのコンセプトには合意されたものの、その形式、特に安全の保証の形式について、アメリカ・ロシア・ウクライナ・欧州間で認識にずれが生じています。

ロシア(ラブロフ外相)は「2022年の直接協議の際にも話し合われたように、国連安全保障理事会の常任理事国が保証のエージェントになるような枠組みでなくてはならない」と述べ、アメリカ政府(バンス副大統領やルビオ国務長官)は「ロシアが参加しない枠組みは意味がなく、決して機能しないだろう」とロシア寄りとも取れる認識を示しています。

首脳会談後、アメリカのウィトコフ特使が示した認識である「NATO憲章第5条の集団的自衛権の行使に準ずるような形式での安全の保証」は、いろいろな情報をベースにすれば、ラブロフ外相やバンス副大統領が示しているものに近いように思われます(ただし、実際にアメリカ側の発言・認識が具体的にどのような内容を指すのかという詳細については要確認です)。

それに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領はもちろん、欧州各国の首脳たちは挙って「ロシアが安全の保証のエージェントとして加わることは絶対に承諾しない」と反対の意を表明し、この議論が完全に平行線を辿り、合意の見込みが立たなくなっています。

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