中国絡みで確立されている「制裁を掻い潜るスキーム」
すでにロシアのエネルギーインフラに対する攻撃に用いられたかどうかは不明ですが、もしフラミンゴが投入された場合、シベリアとサハリンを除く全土の石油施設が射程内に入り、ついでにロシアに協力を提供しているイランの施設も射程距離に入るため、その性能と信頼性にもよりますが、それなりの脅威にはなると思われます。
もしトランプ政権がもう少し前のめりに空軍力・ミサイル力でのウクライナへの安全の保証に関わるならば、かなりの危険を伴いますが、トマホークミサイルの提供の可能性もゼロではないと思われます。
ただし、予てよりプーチン大統領は「NATO軍およびその加盟国の武器がロシアの本土を攻撃する際には、それを対ロ宣戦布告と見なし、新しい核使用のドクトリンの下、核による攻撃の対象となり得る」と繰り返し発言していますので、トマホークミサイルの供与は、アメリカをロシアとの直接的な武力紛争に引きずり込むことになるかもしれません。これまでのところ、トランプ大統領および政権内での話を聞く限りは、このシナリオはないと言い切れるかと考えます。
ターニングポイントがあるとすれば、恐らく、欧米諸国がウクライナにフラミンゴ使用を容認することなのだと考えますが、これは確実に和平をダメにし、ロシアとウクライナの戦争をさらに激化・長期化することになりますので容認はしないものと思われます。
しかし、「ウクライナが自国の判断で用いることは止めない」という“とんでもない但し書き”をつける可能性は決して否定できないため、危険性はまだ高いものと思われます。
ゆえに、個人的には9月3日にプーチン大統領が北京を訪れ、習近平国家主席と首脳会談を行うまでに何らかの和平に向けた結論が出ることはなく、中ロの思惑が合致して、その後ものらりくらりと欧米からの要請をかわし、その間にロシアはウクライナに対する軍事的な攻勢を強めることになると見ています。
ゆえに和平は起こり得ず、戦争が長期化します(それも絡んで、アメリカはロシアから原油・天然ガスを買い続けるインドに対して50%の関税率を課して圧力をかけるようですが、すでに対ロ経済制裁の信頼性は崩れており、ロシアも制裁を掻い潜って取引をするスキームを確立させているため、不発に終わるものと思われます)。
ところでこの“制裁を掻い潜るスキーム”が中国絡みでも確立されていることが分かってきました。
8月28日付の日経新聞の記事にもありましたが、中国がロシアとウクライナ双方に対してドローン部品を巧みに売りさばいているとのことですが、その真偽のほどはともかく、中国の存在が、ロシア・ウクライナ戦争の行方を左右することになるのではないかと思われます。
以前、中国政府がロシアとウクライナ双方に対して停戦の仲介に乗る出す用意があると持ち掛けた際、双方とも乗り気だったのを、欧州諸国が横やりを入れ、ウクライナにNOと言わせた経緯があります(その際に見返りとして提示された武器弾薬などの軍事支援は今いずこ?)。
その後、中国は民生品と称していろいろdual useが可能な製品を、う回路を通じてロシアに提供し続け、北朝鮮やイランからの直接的な軍事支援と合わせ、ロシアの継戦能力を背後から支えてきた経緯があります。
もともと高いとされるロシアの軍事産業の能力に、中国経由で提供される部品や資源を組み合わせて、ロシアの武器生産能力が支えられていることは周知の事実と言えますが、それは同時に欧米諸国がロシアに科した経済制裁を迂回する鍵になっています。
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