アメリカからの圧力をスルーし続け軍事攻勢を強めるロシア
またゼレンスキー大統領はこれに加え「中国が安全の保証の枠組みに加わることも許さない。中国はロシアのウクライナ侵攻を背後から支え続けているからだ」と、アメリカとロシアが支持する形式を全面的に否定していることから、和平協議が成り立たなくなっていると懸念しています。
ちなみに「ウクライナに対する安全の保証」が、ロシア・ウクライナ間の1,000キロメートルに及ぶ国境線に沿った停戦監視のような形をとる場合、アメリカのWar Instituteの試算では、最低でも10万人単位の地上部隊の駐留が必要とのことですが(ちなみにそれは南欧諸国の国軍を併せた規模に相当します)、それをロシアが受け入れる可能性はなく、中国政府も今のところ、この構想に参加する意志を示していないため、実現可能性は低いと見ています。
この“安全の保証”を確実なものにするためには、アメリカの軍事的なコミットメントが不可欠ですが、トランプ大統領は「安全の保証は主に欧州各国が提供するものであり、それをどのように支援できるのかがアメリカのスタンスである」と答え、巷で言われているアメリカ軍の空軍力による支援に対しても「アメリカがどのような空軍力による支援を提供できるか、そもそもそれが必要かどうかについても検討するが、まだその検討さえ始まっていない」と発言し、安全の保証の提供についても実効性が伴わない可能性が浮かび上がっています。
ロシアについては、この欧米間のずれを横目に、再三、トランプ大統領から公の場で合意を急かされている中、ペスコフ大統領府報道官は「合意・和平と言われているが、具体的に何に合意すべきだと言われているのか?それがはっきりしない中、協議しようがないし、ましてや首脳間の話し合いを行うための材料も揃っていない」と、アメリカからの圧力をスルーしています。
外交的な舞台でのショーが続く中、ロシアは対ウクライナ攻勢を強め、協議の机上に上がっていた東南部4州を越え、ウクライナ領内に侵攻して、支配地域を淡々と広めています。
多数の弾道ミサイルとドローンを導入してウクライナ全土への攻撃を続け、地上軍には侵攻の速度を上げさせています。ウクライナも反攻していますが、戦況を好転させる方向には動いておらず、いつまで経っても届かない欧米からの軍事支援と迫りくるロシアの脅威に挟まれて苦戦を強いられています。
ここでカギとなるのが「アメリカ政府はウクライナに長射程のミサイルによるロシア領内への攻撃を容認するのか否か」という点です。
バイデン政権は最終段階においてACTAMSのロシア領内に対する攻撃への使用を許可しましたが、プーチン大統領とロシア政府を過度に刺激したくないトランプ大統領は、その許可を取り消しました。
それが、対プーチン大統領の圧力・脅しかどうかは分かりませんが、最近「ウクライナに対ロシア攻撃を容認すべきだと考える。戦争において一方的に攻撃され、反撃することを許されないのは、守備しか許されない野球と同じで現実的ではない」と発言して、ウクライナによる対ロ攻撃を容認する方向に姿勢を反転させる可能性を匂わせています。
仮にそれが本当だとした場合、それが具体的に何を意味するのかを注意深く見る必要があります。
今年に入ってウクライナが自前で長射程(3,000キロメートル)の弾道ミサイルFP-5(通称フラミンゴ)の開発・配備に成功し、フラミンゴを実戦投入したい旨、アメリカに伝えているようですが、これに対しての“許可”と理解することが出来ます。現時点では、日産1基がいいところだそうですが、アメリカの許可が下りた暁には、日産7基を目指すようです。
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