AIでも宇宙開発でもない?世界の頭脳と富が集まるシリコンバレーで話題をさらう「死ぬな教」教祖の“サプリ100錠”生活という異常な日常

 

AIに知性は任せ人間の形をしたプラスチックみたいなモノに?

ジョンソンは、「Don’t Die Summit(ドントダイ・サミット)」というシンポジウムをサンフランシスコ、マイアミ、ニューヨークなどアメリカ主要都市で開催し、4,000人規模の参加者を集めている。

そこでは老化研究ベンチャーやバイオ企業、ノーベル賞受賞者らが登壇し、「死を遅らせる」「若返る」「不老不死を実現する」といった最新研究やビジネスについて議論が交わされる。

熱気ある最先端医療の発表会にも見えるが、映像では、集まったアメリカ人たちが、「DON’T DIE」とプリントされたTシャツを着て円陣を組み、「私たちは正しい」と言い合ったり、満面の笑みで「どんとだーい!」と絶叫したりする場面もあり、さながらカルト宗教のようでもあった。

シンポジウムやメディアのインタビューで、ジョンソンはくり返しこう語っている。

「AIの進歩によって、“人間とは何か”を再構築する必要が出てきました。仕事はどうなるのか?アイデンティティは保たれるのか?誰を信用すればいいのか?これらの疑問に対して、私は“DON’T DIE”を提唱します」

「知性が超越的な領域に達すると、存在だけが価値となります。存在こそが目的となるのです。私たちは、“身体こそが神だ”という考えを広めています。毎週の集まりでは、マントラを唱え、自分の身体に謝罪する時間を設けています」

「“DON’T DIE”は、人類全体の宗教だと思います。誰もが行える、分散型の宗教です。今後1~2年で最も影響力のある世界的イデオロギーになる必要があります」

存在だけが価値、存在だけが目的で、そのために死なない身体を手に入れるということは、人間として意識を持つことをやめて、変化することを拒絶する、即自存在になるということだ。

私には、こう言っているようにも聞こえる。

「AIに知性は任せて、みんなで人間の形をしたプラスチックみたいなモノになろう!」

実際、それを目指しているんだろう。ジョンソンは、毎日摂取する食物やサプリメントの内容、検査やトレーニングの種類を、すべて専用のAIに決めてもらい、AIの処理手順と一体化して生きているそうだ。

自分で考えて、自分で決めて生きることが、よほど嫌なのだろうか。

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image by: Katriece Ray , CC0 1.0, via Wikimedia Commons

シリコンバレーの億万長者の間では、「若返り」「不老不死」への興味関心は半端ではないようで、ジョンソンの日々の様子は映像化され、Netflixで『DON’T DIE “永遠に生きる”を極めし男』というタイトルで日本向けにも公開されている。

映像では、ジョンソンがモルモン教の家庭に生まれ育ったことが明かされていた。モルモン教は、キリスト教系の新興宗教で、「神に近づく」信仰と厳しい戒律を重んじる宗教だ。

仕事で大成功したジョンソンは、教義と現実社会との乖離に悩み、鬱になって、モルモン教を脱会。教会の決まりで離婚させられたという。

そこから立ち直る過程でたどり着いたのが、「自分の心を信じるのではなく、身体に従って生きること」だった。つまり、モルモン教の神を捨てた代わりに、自分の身体を神に置き換えなければ、生きられなかった人なのだ。

泉美木蘭さんも寄稿する『小林よしのりライジング』

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