始まったカネに糸目をつけない「死なない」ための爆走
そこまでなら、気の毒な人だな、一神教の世界ってそうなるんだなという話で終わるところだが、ジョンソンには、巨万の富とシリコンバレーのテクノロジーがあった。
以降、カネに糸目をつけず、「死なない」ために爆走しはじめるのだが、やがて「若い血を輸血する」という禁断の治療にまで手を出す。若返りのために、18歳の息子から血漿を輸血するという「治療」を行っているのだ。
ある実験では、年老いて心臓の肥大したマウスと、若いマウスとを外科手術で結合させ、それぞれの静脈と動脈をつないだまま4週間置いたところ、年老いたマウスの心臓が正常な大きさに戻り、認知機能や代謝、骨密度の改善も見られたという。
この研究は、認知症やパーキンソン病に効果があるのではないかと推測されているそうだが、米政府機関からは「血漿で若返るという結果ではない」「人体に対してはリスクがある」と警告が出ている。
だが、ジョンソンは「死なない」ためなら躊躇しない。
息子から1リットルの血液を抜き、機械で血漿を分離して、自身に注入。
げげっと思うが、息子以外にも、他人の若いドナーから何度も血漿を受けているので慣れているらしい。
ただ、ジョンソンの場合、「ドナーになってくれるなら、どなたでも結構です」というわけではない。候補者を事前に調査して、「理想的な体格指数(BMI)」を持ち、健康的な生活を送り、病気にかかっていないことを確認してから選ぶのだという。
なんというか、浅ましさが極まっていて、嫌悪感でいっぱいになる。
「死なない」ことに魂を売った、吸血鬼なのでは……。









