テスラが7月に発表し、9月から納入が始まった中国向け最新モデルEV「Model Y L」。その車載音声アシスタント機能に、イーロン・マスク肝いりの「Grok」ではなく中国勢のAIを採用することが報じられ、一部界隈で話題となっています。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、その背景を深堀り。テスラが現地AIを導入せざるを得ない理由を3つ挙げ、各々について解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:テスラModel Y LでDeepSeekとバイトダンスAIモデルを採用へ
テスラModel Y LでDeepSeekとバイトダンスAIモデルを採用へ
テスラは中国市場向けの最新モデル「Model Y L」において、中国勢のAIモデルを活用した車載音声アシスタント機能を導入する計画が報じられた。
具体的には、TikTokで知られるバイトダンス傘下のAI「豆包」と、中国発の大規模言語モデル「DeepSeek」を組み合わせる。
これは、同社の米国市場で導入が始まった自社系列xAI開発の「Grok」ではなく、中国本土のAIモデルを採用するという点で注目される。
背景には、中国特有の法規制や市場の期待、そして地場メーカーとの激しい競争がある。
両AIを使い分ける
テスラの公式文書によれば、このシステムでは「音声コマンド処理」を主に豆包が担い、エアコンの温度調整やナビゲーション指示といった即時応答型の操作をカバーする。
一方で、ニュース要約や会話的なインタラクションはDeepSeekが担い、より知識的で文脈を理解するやり取りを実現する。
このように機能を二分しているのは、一見冗長に映るが、実際には両者の強みを生かした設計だ。
豆包は中国語音声認識や短時間レスポンスに強みがあり、DeepSeekは推論や複雑な対話に優れる。
それぞれを分担させることで「誤認識せずに即応しつつ、会話として破綻しない」という最低限の体験を確保する狙いがある。
UX向上は限定的
とはいえ、これがそのまま理想(Lixiang)の「理想同学(理想くん)」のような高度なUXに直結するわけではない。
理想くんは、車両センサーや走行計画と統合され、ユーザーが発話する前に「あと10分で充電が必要です」や「渋滞回避ルートに切り替えますか」といった自律的な発話・提案を行うことが可能だ。
対して、テスラの今回の中国AI搭載は、まず「スムーズな双方向会話を成立させる」ことに主眼が置かれており、車側から積極的に話しかける段階までは到達していない。
米国で搭載が始まったGrokも現状は受動的な応答型であり、車両制御コマンドへの統合は限定的だ。
したがって、今回の中国向けモデルも「ようやくまともな音声アシスタントを手に入れた」水準と捉えるのが妥当だろう。
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