中国勢AI採用の背景
ではなぜテスラは中国で自社のGrokを使わず、現地AIを採用したのか。その理由は三つある。
第一に規制対応だ。外国製AIをそのまま導入するのは中国当局の審査を通過しにくく、情報統制やセキュリティ上のリスクもある。
第二に市場適合性である。中国の消費者はスマート家電やスマホで高度な音声アシスタントに慣れており、自動車も「スマート端末の延長」として自然な会話体験を期待する。
この期待に応えるには、中国語音声に特化し方言やローカルな言い回しに強いモデルを使う方が有利だ。
第三に競争環境だ。Liはもちろん、BYD、蔚来(NIO)、吉利(Geely)といった中国メーカーはすでにDeepSeekや自社AIを統合し、車載アシスタントをセールスポイントにしている。
この流れに後れを取れば「テスラは時代遅れ」という印象を与えかねない。すでに実際中国のSNSで、音声認識の精度が悪いと言った書き込みが散見されるようになっている。
中国では時代遅れ感?
テスラ上海工場の出荷台数は2025年前半に複数月で前年割れを記録しており、足元では販売に陰りも見える。
こうした状況の中での中国AI採用は、テスラが現地市場に本気で向き合っているシグナルともいえる。
従来の「世界共通のシンプルUI」思想から一歩踏み込み、中国固有のニーズに適合させる方向へ舵を切ったのだ。
Model Y Lそのもののリリースもそうだが、テスラの世界第二の市場である中国への重視度合いと関連している。
中国がテスラを変える
総じて、今回のModel Y Lへの中国AI搭載は「現地競合に追いつくための必須の一手」と評価できる。
ただしその機能は、理想くんのような先進的UXに比べれば限定的であり、まずは会話体験を底上げする段階に過ぎない。
テスラにとっての課題は、ここからさらに車両センサーや制御系とAIを結び付け、どこまで差別化できるかにある。
実際そこまでするかどうかが一つの指針になる。中国市場及び中国勢がテスラを動かし、そしてそれが続くことになるのか、注目される。
出典: https://auto.gasgoo.com/news/202508/25I70432016C601.shtml
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