米国が仕掛けたトランプ関税は、今となっては日本の製造業を再び輝かせる追い風となりつつあるのに気が付いているでしょうか?メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは今回の記事で、日本経済に取っ手失われた製造業の栄光を取り戻す契機としてのトランプ関税について語っています。
日本はトランプ関税で製造業を取り戻す
1.失われた製造業の栄光と新たな転機
日本経済の象徴として長らく世界をリードしてきた製造業は、1980年代の絶頂期を過ぎ、徐々にその輝きを失っていった。高コスト構造、円高の影響、グローバル化の波にさらされ、多くの企業が生産拠点を海外、特に低人件費の中国に移転した結果、国内の工場は空洞化し、雇用機会も減少した。
2020年代初頭には、米中貿易摩擦が激化し、トランプ政権の関税政策が世界経済を揺るがした。当初、これを脅威と捉える声が多かったが、2025年現在、振り返ってみると、この「トランプ関税」は、期せずして日本の製造業復活の触媒となっている。
トランプ関税とは、主に中国製品に対する高率関税を指すが、2025年の第2期政権では、日本を含む同盟国にも拡大適用された。
例として、自動車や鉄鋼に対する15%から25%の関税が課せられ、日本製品の米国輸出に影響を与えている。しかし、これが逆説的に日本に利益をもたらす理由は、サプライチェーンの再編、資金の国内回帰、新興市場の開拓、そして技術革新の加速にある。
本稿では、これらの考察を基に、トランプ関税がもたらすポジティブな影響を分析し、明るい日本の将来を展望する。これは単なる地政学的変動ではなく、日本製造業のルネサンスを予感させる好機である。
2.米中対立の恩恵:中国依存からの脱却
まず、トランプ関税の核心は米中貿易戦争の延長線上にある。中国への資本流入が減少し、市場アクセスが制限されたことで、多くの多国籍企業が中国依存のリスクを再認識した。
日本企業も例外ではなく、トヨタやパナソニックをはじめとする大手が、中国工場からの撤退を加速させている。2025年のデータでは、日本企業の対中投資が前年比20%減少し、代わりに国内回帰投資が15%増加したという報告がある。
このシフトの背景には、関税による中国製品の競争力低下がある。中国製の低価格商品が米国市場で不利になると、日本の高品質製品が相対的に優位になる。
たとえば、半導体分野では、TSMCの熊本工場誘致が成功例だ。台湾企業ながら、日本政府の補助金と安定したビジネス環境が決め手となり、2025年までに数千人の雇用を生み出している。これにより、日本は中国に依存しないサプライチェーンを構築し、米中対立の「漁夫の利」を得ている。
さらに、トランプ政権の保護主義は、米国自身の信頼性を損ない、資金の逃避を促した。米国の政治的不安定さと関税乱発により、投資家はより安全な避難先を求めるようになった。日本はその筆頭候補だ。
安定した政治、法治国家としての信頼、そして円の相対的安定性が、海外資本を呼び込んでいる。2025年の外資流入額は過去最高を更新し、特に欧米からの資金が製造業分野に集中している。
これにより、日本企業は設備投資を拡大し、国内工場の近代化が進んでいる。
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