習近平が集めたメンバーの顔ぶれに焦りを隠せぬトランプ
ただ今回の戦勝80周年のイベントで重視されるのは地域の安定にとどまらない。
軍事パレードの解説のためアメリカのテレビ番組に出演したカート・キャンベル元国務副長官が指摘したように、中国があの場に集めたメンバーは今後の経済発展が予測される地域のリーダーばかりだったという点にも注目されているからだ。
アメリカの焦りは明らかだ。
軍事パレード以前には、ロシアのウクライナ侵攻に絡んでインドばかりを批判してきたアメリカが、にわかに中国の責任にも言及するようになったのは一つの兆候だ。
トランプは軍事パレードの翌日、フランスのマクロン大統領らヨーロッパ首脳と電話で会談した際、中国が経済的にロシアを支えていると指摘。加えて「中国に経済的な圧力を加えなくてはならない」と主張したのである。
軍事パレードを実際に見るまでトランプは、「習近平国家主席との関係は良好だ」などとして「懸念はない」という認識を示していた。その根拠は「中国は我々を必要としている。習主席との関係は良好だ。米国が中国を必要とする以上に、中国は我々を必要としている」というものだった。
中国がアメリカを必要としていることについては、そのとおりだ。しかし、トランプ政権やその前のバイデン政権が繰り出す関税政策や一部のハイテク製品を対象とした輸出規制に、中国が唯々諾々と従うのかといえば決してそうではない。
対決や対抗は望まなくても、アメリカの思い通りにはさせないというわけだ。
その中国の姿勢が表れたのが軍事パレード後の深夜に中国が発動したアメリカ企業に対する反ダンピング関税だ。
対象はアメリカを原産地とするカットオフシフトシングルモード光ファイバーを扱う2つの企業で税率は最高で78.2%。中国がこのタイミングを狙って発動したのか否かは不明だが、今年3月から「反規制回避調査」を行ってきた。
中国の課税は世界貿易機関(WTO)のルールに則ったものだが、いずれにせよ「やることはやる」との宣言に等しい。
SCOで中国を抱き込もうとしたインドとロシア。軍事パレードで中国との親密さを演出したロシアと北朝鮮。いずれの思惑とも中国は一線を画しているが、アメリカの思い通りにならない世界を拡大させたいと考えていることは間違いなさそうだ。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2025年9月7日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト









