裏金議員たちを中心とした勢力に、石もて追われた形で退陣を余儀なくされた石破茂氏。9月7日に開かれた辞任表明会見で語られた内容は、無念さが滲むものでもありました。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、会見の重要箇所を文字起こししつつそこから読み取れるさまざまな「事実」を深堀り。さらに自民党が総裁選を後回しにしてでも迅速に進めるべき「仕事」を提示しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:国民軽視の自民党政治
内輪揉めの末の石破退陣劇。あまりに国民軽視の自民党政治
9月7日の日曜日、全国の人が驚いた大きなニュースが流れました。そう、「今夜、3年ぶりの皆既月食!」…じゃなくて、「阪神タイガース、2年ぶりのリーグ優勝!」…じゃなくて、「石破首相、わずか1年で辞任へ!」です。一応「3年、2年、1年」とアントニオ猪木式にダーーーッ!と書いてみましたが、石破首相の早期退陣を予感していた人たちの多くが「なんでこのタイミングなの?」と思ったことでしょう。
だって、毎月のように多くの食品が値上がりし続け、ガソリンも一向に安くならず、銘柄米は安くなるどころか逆に高くなってるのに、消費税は減税されないし給付金も支給されない状況で、ぜんぶ丸投げしてトンヅラですか?石破首相、今年の通常国会でも7月の参院選でも「物価高対策は自民党政権の最優先課題でございます」って何度も言ってたのに、アレッて嘘だったんですか?…って思ったからです。でも、本人の説明を聞いた上でツッコミを入れるのがマナーなので、まずは9月7日の会見を文字起こししてみました。
石破茂首相 「急なご案内で誠に恐縮であります。この度、私は、自由民主党総裁の職を辞することといたしました。そのため、党則第6条第2項に基づく総裁選、すなわち、任期中に総裁が欠けた場合の臨時総裁選の手続きを実施するよう、森山幹事長に伝えたところであります。従って、党則第6条第4項に基づく臨時総裁選の要求手続きを行なう必要はございません。新総裁を選ぶ手続きを開始していただきたい。このように考えております」
おいおいおいおいおーーーーい!これって自民党内の内輪揉めであって、国民は関係ないじゃん!そんなことのために自民党は一国の首相を辞任させてダラダラと長い時間をかけて総裁選をやって秋の臨時国会の開催を遅らせるのかよ!お前ら一体どんだけ国民を軽視してんだよ!…なんて言いつつ、続きを見てみましょう。
石破首相 「まさに国難とも言うべき米国関税措置に関する交渉は、私どもの政権の責任において道筋をつける必要がある、このように強く考えてまいりましたが、先週の金曜日に投資に関する日米覚書の署名が行なわれ、米国大統領令も発布されました。昨日帰国した赤沢大臣から直接報告を受け、私としてもひとつの区切りがついたと感じることができました。兼ねてから私は、地位に恋々とするものではない、やるべきことを成した後にしかるべきタイミングで決断する、このように申し上げてまいりました。
併せまして、選挙結果に対する責任は総裁たる私にあると、このようにも申し上げて来たところであります。米国関税措置に関する交渉にひとつの区切りがついた今こそが、その『しかるべきタイミング』であると考え、後進に道を譲る決断をいたしました」
トランプ関税の交渉の道筋が「しかるべきタイミング」って、それ、あまりにも無理があり過ぎじゃん!翌日の9月8日が党則第6条第4項に基づく臨時総裁選の要求手続きの期限だったから、それを阻止するための「ギリギリのタイミング」で辞任会見をしたって、みんな知ってんだから、こんな見え見えの嘘なんかつくことないのに…とイジリつつ、この先も見てみましょう。
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自ら語ってしまった「石破おろし」劇場の本丸
とは言っても、この先は自分が就任してから今までにどれだけの成果を挙げたのかを長々と述べてるので、その部分はザックリとカットして、重要な部分のみ文字起こしして行きます。
石破首相 「政治改革につきましては、昨年、総裁として政策活動費の廃止、いわゆる旧文通費の使途公開と残金の返納、政治資金規正法に基づく第三者機関の早期設置という方針を示し、昨年末には政治改革法が成立いたしました。それでもなお、政治とカネの問題を始め、国民の皆様方の政治に対する不信を払拭することは、未だにできいおりません。このことは私にとって最大の心残りであります」
ほほう、企業献金を死守したことは自分の手柄として挙げないのね(笑)つーか、「政治とカネの問題」に関して国民の不信を払拭できていないことは一応自覚してんのね。そもそもの話、去年の衆院選で自民党がボロ負けしたのは、安倍派を中心とした裏金議員どもの大半を公認したからであり、トドメを刺したのは責任が重くて非公認にした議員にも1人2,000万円の選挙資金を振り込んでたことがバレたからだろ?
すべては森山幹事長の采配だけど、これを止められなかった「名ばかり総裁」が責任を問われるのは当然でしょ?…で、いよいよ今回の辞任劇の本丸です。
石破首相 「私としましては、まだやらなくてはならないことがあるという思いの中、身を引くという苦渋の決断をいたしました。それは、このまま党則第6条第4項に基づく臨時総裁選要求の確認に進んでしまっては、党内に決定的な分断を生み出し兼ねないと考えたからであり、それは決して私の本意とするところではございません。自民党の皆様にはその思いを共有していただき、共にこの難局を乗り越えていただきたいと、心から強く願っております」
ほらほら、やっぱ今回の辞任は自民党の内輪揉めによる都合であって、トランプ関税なんて関係ないじゃん。国民の大半は自民党が分断しようが下野しようが知ったこっちゃないと思ってんのに、何で国民の生活より自分たちの都合を優先してんの?…とか言ってみつつ、あと少しなので取りあえず最後まで見てみましょう。
石破首相 「古い自民党のままである、何も変わっていない、国民の皆様方からそう見られるようでは、党の明日はございません。真の意味での解党的な出直しを成し遂げなければなりません。本日この場をその一歩とすることができますよう、党員党友の皆様方のお力を賜りますよう、心よりお願いを申し上げます」
おいおい、誰に向かって会見してんの?お前の国には自民党員しか住んでないのかよ?…とか合いの手を入れてみつつ、さあ、最後はようやく国民に向けての言葉です!
石破首相 「国民の皆様方には、このような形で職を辞することになったことを、大変申し訳なく思っております。本当に申し訳ございません。残された期間、全身全霊で国民の皆様方が求めておられる課題に取り組んでまいりますので、何卒ご理解を賜りますよう心よりお願いを申し上げます。私からは以上であります。ありがとうございました」
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質疑応答で分かった石破氏に「引導」を渡した人物
…というわけで、ここから会見は質疑応答に入りますが、その中にとても重要な発言があったので、それも文字起こししました。まずはテレビ朝日の男性記者なのですが、名前が良く聞き取れませんでした。
テレビ朝日の記者 「昨日の夜、菅副総裁と小泉農水大臣が公邸に入られて、内容としては8日を前に(辞任の)判断を求める、説得されたと聞いています。これはどれほど影響があったのか。影響があったとすれば、どのような言葉が響いたのか。具体的にお聞かせください」
石破首相 「菅副総裁、小泉農林水産大臣との会話の内容は、ここでお話しすべきことだと私は思っておりません。政治家同士の話をペラペラしゃべるような、私はそのようなことは断じていたしません。しかし、副総裁から、党の亀裂は避けるべきである、分断などというものはあってはならない、ということは歴代の総理総裁の経験者の皆様方とお話しをした時から、非常に強く副総裁がおっしゃっていたことでございます。
多くの方々からご意見を承る中にあって、やはり私どもの政権というものは、菅元総理のいろいろなお知恵、お力によるものが大きかったと考えております」
石破首相は、小泉農水大臣に関しては「多くは発言していない」と述べたので、最近の菅ちゃんを見る限り、シンジローは菅ちゃんの「介護要員」だったのだと思います。
で、この石破首相の言い回しは分かりずらいですが、9月8日に臨時総裁選の要求手続きが出されたら自民党に亀裂が入る、分断してしまう、それだけは絶対に避けるべきだとの申し入れが菅副総裁からあり、それを受けての辞任ということが分かります。
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永久に変われない旧態依然とした時代遅れの自民党
続きましては、石破首相が懇意にしている鳥取県の日本海新聞の西山記者からの質問です。
日本海新聞の西山記者 「昨年、地元鳥取県は石破総理誕生ということでかなり湧きまして、地方の実情を良く知る総理ということで期待を寄せました。結果的に約1年での退陣ということになり、総理肝いりの政策の多くが道半ばだと思います。今、地元鳥取県の方々に何を伝えたいですか」
石破首相 「(私は)5回目の出馬で総裁になることができた、それは本当に厳しい時、どんな時でも支えてくださった地元鳥取の有権者の方々、あるいは県民の皆様、そういう方々のお支えがなければ、私は決して総理総裁をつとめることはできませんでした。そして去年の9月にどれほど喜んでくださったことかと、その光景を今も忘れることはありません」
石破首相 「やはり地方で育った者として、そして1日200軒、300軒、ずっと歩いて来た者として、地方の実情というのはよくよく知っております。先ほどの賃上げのお話にしましても、鳥取県は非常に大きな取り組みをしていただいたと思っています。それは平井(伸治)知事を始め多くの方々が、一番ちっちゃい県だからこそ頑張らなきゃいかんと、そういうことで取り組んでいただいたお陰でございます。私はこの間の両院総会でも、石破なら変えてくれると、石破らしくやってくれと、そうした強いご期待で総裁になったと思っております」
石破首相 「しかし少数与党ということで、あるいは、党内において大きな勢力を持っているわけでもございません。そして、本当に多くの方々に配意をしながら、融和につとめながら、誠心誠意つとめて来たことが、結果として『らしさ』を失うことになったという、一種の、何て言ったらいいんでしょう、どうしたら良かったのかなあ、そういう思いはございます。しかし、いろんな制約の中で、るる申し述べて来ましたように、やるべきことは、私自身、本当にこれ以上はできなかったというほどに、できたと思います」
石破首相 「誇るつもりもないし、自画自賛するつもりもないし、だけども本当に多くの方々のお力のお陰で、1年間やることができたと。結局、地元に帰ることは1回しかできませんでした。それは、地元の人に本当に喜んでもらえる機会というものをもっと与えたかったと思います。これからまた、地元の皆様方とともに、新しい日本を地方から創るということに邁進して行きたいと考えております。県民の皆様方に本当に心からのお礼を申し上げ、ご期待に応えることができなかったことをお詫び申し上げます」
奥歯にモノが挟まったような言い方しかしてませんが、ようするに、党内に大きな勢力を持たない自分は、党内のパワーバランスによって長いものに巻かれなきゃならない場面が多々あり、そうした要求に仕方なく応えて行くうちに「石破らしさ」を失ってしまった…と言ったわけです。ま、それは国民から見ても一目瞭然でしたが、それと同時に、自民党は永久に変わることのできない旧態依然とした時代遅れの化石政党だということも分かりました。
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最後に1つだけやってほしい多くの国民が求めていること
結局のところ、あたしが「石破らしさ」を感じることができたのは、広島と長崎の原爆の日のスピーチくらいでした。原爆の日のスピーチは、安倍晋三首相以降、スピーチライターに書かせた同じ原稿を毎年使い回して来た上、菅義偉首相に至っては1ページ読み飛ばしたのに気づかなかったというテイタラクでした。しかし石破首相は、ベースとなる原稿はスピーチライターを使ったかもしれませんが、ちゃんと自分の言葉を入れてオリジナルのスピーチを行なったのです。
これは本来「当たり前のこと」ですが、それまでの3人の首相がクズ過ぎたので、石破首相が立派に見えました…というわけで、先ほどの書き起こしにあるように、石破首相は辞任会見の最後にこう述べています。
石破首相 「残された期間、全身全霊で国民の皆様方が求めておられる課題に取り組んでまいります」
石破首相、この言葉が本当なら、辞任まであと3週間以上もあるのですから、多くの国民が求めていることを最後に1つだけやってください。それは「戦後80年談話」の発表です。これなら自民党内に協力者が1人もいなくても自分だけで作成できますし、それこそ「石破らしさ」を出すことのできる最後のチャンスだからです。
この提案に賛成の人は、石破首相の公式ツイッター(現・X)に「石破首相、辞任までに戦後80年談話の発表をお願いします!」とメッセージを送りましょう♪
さて、最後に「石破排除」に成功した自民党の懲りない面々に対して、今回の会見の質疑応答で最後に石破首相が述べた言葉を送りたいと思います。これは、河北新報の関川記者からの「参院選後、党内から石破おろしの声が挙がる一方、世論調査では石破支持が急上昇した理由」を質問された石破首相の答えです。
石破首相 「これは私に対するご評価をいただいたというよりも、きちんと仕事をしてくれと、そういうことではなかったかと思っております。党内でいろんな争いをするよりも、きちんと仕事をしてくれと、国家国民に対して仕事をしてくれと、そういう強い意思の表われではなかったかと思います」
そうなのです。国民は政権与党に「仕事しろ!」と言っているのです。誰がやっても何も変わらない自民党の総裁選など後回しにして、まずは今すぐ臨時国会を召集し、石破首相のもと「ガソリン暫定税率の廃止」や「消費税減税」などホッタラカシの政策を前へ進めてください。自民党が仮にも「責任政党」を自称するのなら、それが今すべき仕事でしょう。
(『きっこのメルマガ』2025年9月10日号より一部抜粋・文中敬称略)
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