またも“やらかした”イスラエル。ガザ停戦の淡い期待を打ち砕いた暴君ネタニヤフの「カタール空爆」という大蛮行

 

問題解決を阻む欧米の無知と相手を理解しようとしない姿勢

そして状況をより難しくしている要因が当該国政府の消極的な姿勢か、統治機能の不在です。

国際的な支援・援助を行うにあたっては、受け入れ国の要請の存在が前提になっており、一般的にアラブ諸国(サウジアラビア王国やアラブ首長国連邦、カタールなど)は財政的な問題はなく(潤沢な原油・天然ガス資源のおかげ)、支援を要請する必要がないのですが、何よりも「これは国内の問題である」という、堅く言えば内政不干渉の原則を盾に、他国および国際機関からの介入を拒む姿勢が存在します。

それはまた“人権”絡みの問題にもつながり、欧米諸国および国連から再三指摘される人権侵害の問題に対しても対立しており、状況の改善が期待できません。

環境問題については、エネルギーセクターにおける懸念については、自国の経済と直結することもあって、比較的よく認知しているものの、現在、顕在化してきている環境の悪化と被害の拡大はそもそも欧米諸国に代表される先進国の身勝手な態度と政策、そして向こう見ずな開発戦略であるとの立場から、支援を拒むだけでなく、真正面からの議論も拒む姿勢が目立ちます。

気候変動問題をはじめとする環境問題についての国際的な協調の議論においても、そして現在、進行中のイスラエルと中東諸国(アラブ諸国)との刮目に絡む地域安全保障問題においても、独自の立場を貫き、時にはいわゆる“国際合意”に対しても挑戦的は姿勢を取ります。

私も以前、気候変動問題の交渉に携わっていた際、よくサウジアラビア王国を筆頭に、さまざまな中東諸国との交渉において調整に苦慮していましたが、気候変動交渉官を退き、中立な第3者(Third Party Neutral)の立場で仕事をするようになってからサウジアラビア王国やアラブ首長国連邦政府の交渉官たちと意見交換した際、その理由についていろいろと教えてもらいました。

理由としては「なんでも自分たちの方がよく知っているから、正しいやり方を教えてやるという、欧米、特に欧州各国の一貫した中東諸国に対する姿勢が受け入れられない」ことがあるようですが、加えて「諸悪の根源は自分たちの政策や態度であることを理解していない。このような姿勢で臨んでくる限り、私たちが納得することはできないし、彼ら・彼女たちが考える“問題”は一切解決しないだろう」という考えが強くあるようです。

よく意見交換をするサウジアラビア王国の長年の友人曰く、「それは欧米人の純粋な無知と相手を理解しようとしない姿勢の表れ」とのことでした。

この姿勢および認識が、現在のイスラエルを巡る様々な対応の間違いに繋がり(これはアメリカに対しても同じと言えるでしょう)、アラブ諸国の心情や複雑に絡み合う背景事情をくみ取ることなく、頭ごなしに停戦案の受け入れとそれへの追随を迫ってくるがために、地域における協力関係の基盤を一切築けないことに繋がっていると考えられます。

仲介の労を担うカタール政府は、アメリカとの協力を前面に打ち出すものの、国内政治の現場では頭ごなしに指示してくるアメリカの姿勢に苛立っており、かつ何もしないのに口出しだけしてくる欧州に嫌気が差し、信用して一緒に行動を共にすることができない心情がどうしても拭えないようです(これは同じく仲介の労を担うエジプト政府も、サウジアラビア王国なども同じのようです)。

そこに歴史的な反イスラエル思想が加わり、アラブ諸国がパレスチナに抱く複雑な心情(かつてパレスチナ人に自国を荒らされた歴史に基づく心情)とアラブの連帯の重要性との微妙なバランスがまだ取り切れないために、なかなか統一した立場が示せなくなっているとのことです。

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