ネット広告市場で長らく一強状態を誇るグーグル。そんな巨大企業にEUが与えると発表したペナルティが、思わぬ事態を生んでしまったようです。今回のメルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野晃一郎さんが、グーグルが独占禁止法に違反していると判断したEUが同社に課した制裁の内容を紹介。さらにこの判断に対するトランプ大統領の反応を取り上げるとともに、EUが自ら作り出してしまった苦しい状況を解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:EUがグーグルに29.5億ユーロの制裁金を課す
プロフィール:辻野晃一郎(つじの・こういちろう)
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。
EUがグーグルに29.5億ユーロの制裁金を課す
前号のこのコーナーでは、グーグルが、反トラスト法(独占禁止法)違反に対する是正措置で分割を回避した件を取り上げましたが、今号でも再びグーグルの話題を取り上げます。
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EU(欧州連合)の執行機関である欧州委員会は、5日、グーグル(アルファベット)に29億5,000万ユーロ(34億5,000万ドル、約5,000億円)の制裁金を課すことを発表しました。広告事業における反競争的慣行がEUの反トラスト法に違反していると判断したためです。
グーグルは、企業の広告出稿と、媒体企業の広告枠販売をマッチングさせる仕組みを提供し、ネット広告市場では、売り手側にとっても買い手側にとっても支配的な存在です。
欧州委は、グーグルがこうした「アドテック」分野で独占的なサービスを手がけることで、支配的地位の乱用にあたる行為を行っていると判断し、制裁金に加えて、60日以内にビジネスモデルの是正案を欧州委に提出するよう求めています。
米国でも、司法省が、前回取り上げた検索市場における反トラスト法違反だけでなく、広告事業における支配的地位の乱用についても同様の内容で提訴していて、今月から連邦地裁で是正措置に対する審理が始まる予定です。
今回の欧州委の動きは、それに合わせてグーグルに再び事業分割を迫る目的ともいえます。ただ、前回と違って、グーグル(アルファベット)の株価にはまったく影響しておらず、今のところ史上最高値に近い240ドル前後を維持しています。
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