トランプが「関税で報復」か? Google日本元社長が憂慮、独禁法違反でグーグルに5千億円の制裁金を課したEUが自ら締めた首

 

グーグルは、「欧州委の決定は誤りで、異議申し立てを行う。不当な罰金で、欧州の数千社に及ぶ企業の収益機会を損なう変更を要求するものだ」と批判していますが、トランプ大統領も、自身のSNSで「極めて不公平だ」とポストしています。その上で、「これらの差別的な措置を許容しない」と欧州委を批判し、グーグルへの制裁金について、「(米国企業への制裁金のこれまでの累計額が)165億ドルにも達したことはあまりにも異常だ。EUは米国企業に対するこの慣行を直ちに停止すべきだ」と述べています。さらに、「通商法301条に基づく調査を開始せざるを得ないだろう」として、報復関税の手続きを取ることを示唆しました。

EUは、2022年以降、米巨大テック企業をターゲットに、デジタルサービス税(DST)などのデジタル新法を成立させてデジタル規制を強めていますが、トランプ2.0政権になってからは、相互関税やウクライナ戦争などへの悪影響を恐れて制裁には慎重になっていました。

欧州委による今回のグーグルへの新たな制裁金の発動や是正命令は、グーグルの反発だけでなく、トランプ政権の反発も招く結果となっていて、EUとしては、グーグルを制裁するつもりが、「デジタル主権」「米国との貿易協議」「安全保障」というトリレンマに自らが苦しむ状況を作り出したともいえそうです。

(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年9月12日号の一部抜粋です。メルマガ限定記事を含む全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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