高市早苗の「AIサナエさん」とはワケが違う。政党代表に「AIペンギン」を選任した「再生の道」の“ふざけている”わけではない主張

 

現行「AI」の発展形である「AGI」は、自己学習を繰り返しながら成長し、人間と同等、あるいはそれ以上に、複数の分野を横断して理解・推論できる。未知の状況でも、既存の知識を応用し、自律的に解決策を見つけられる。“思考マシン”に近い存在だ。それだけに、人間が過度に頼りはじめると、「制御できない存在」になるリスクもはらむ。

近いうちに必ずやってくる「AGI」に政治がどう対処するべきか。「AI」段階から、それを補助ツールではなく、あえて中核に据えて試行錯誤しておかないと、他国にますます引き離されてしまう。そんな危機感が奥村氏ら「再生の道」のメンバーにはあるのかもしれない。

現状、この分野で台湾やヨーロッパに先を越されているのは間違いない。

台湾は「先進国」と言えるだろう。象徴的なのは、デジタル担当閣僚を務めたオードリー・タン氏の存在だ。タン氏は「参加型民主主義」の旗手として、政府と市民の間をつなぐオンライン熟議システム「vTaiwan」を推進してきた。AIによって大量の市民意見を分類・可視化し、特定の利害に偏らない合意形成を前進させる仕組みだ。

欧州では、政治のAI対応が制度的にも前に進んでいる。きっかけは、2022年にデンマークで誕生した「人工党」だ。政策のすべてをAIが担当する試みとして注目されたが、同時に疑問の声も広がった。AIが収集したデータには、バイアスが含まれている。「公平で客観的」とのイメージだけで、AIの示す政策に従うことは、民主主義にとって、正当性があるといえるのか。

そこで、欧州議会は「AI法」を通じ、AIを公共分野で利用するさいの倫理基準やルールを整えつつある。つまり、AIを政治の現場に取り込むにあたって、民主主義の基本原理を損なわない仕組みを同時に設計しようとしているわけだ。

日本でも、遅ればせながら、AIを主力とした政党が誕生した。言うまでもなく、7月の参院選で1議席を得た「チームみらい」(安野貴博党首)だ。看板政策は「デジタル民主主義」。AIやテクノロジーを駆使し、誰もが日常的に政治に参加できる仕組みをつくろうという試みだ。

他党が「AI活用」と言いながらSNSやパブコメの意見集約にとどまるのに対し、「チームみらい」はその先の「合理的な政策選択」にまでつなげようとするところに先進性がある。

第一段階は「ブロードリスニング」。SNSや街頭の声をAIが整理し、可視化する。第二段階はふだん自分の意見を言わない人の声をAIとの対話で引き出す「いどばた」システム。第三段階では、利害対立をAIが中立的に整理し、建設的な合意形成を促す“熟議型プラットフォーム”を構築する。

もちろん、現行のAIに過度に依存するのが危険なことは誰しもわかっている。そこで、「チームみらい」は、あくまでAIを人間の判断を支える補助役と位置づけ、政策形成の透明性と納得感を高める道を模索するという。

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