「国連の機能不全」を招いた“戦犯”は誰か?イスラエル絡みの決議案に拒否権を発動しまくる米トランプが国連批判の噴飯

 

悲惨な結果を招いたゼレンスキーの「中ロ非難演説」

その際、UAEは“隣国”イランを取り込んでおく必要がありますし、ワイルドカードであるトルコも引き込んでおく必要がありますが、その協議が今、ニューヨークの国連総会の裏で行われているようです。

本来はこのような議論は安保理で行うべきだと考えますが、もう安保理の地位と意味づけは形骸化し、いろいろな国々が、安保理を回避して、総会での決議(たとえ法的拘束力は生じなくても、圧倒的多数の意見と要請として示すことができる)にかける傾向が鮮明化していますので、そのための働きかけが昼夜問わず行われているようです。

この“安全保障理事会回避”の動きは、近年、どの分野でも鮮明化しており、主に途上国のグループ、グローバルサウスの国々から「我々の地球レベルでの運命を15か国の手に委ねるわけにはいかないし、15か国、特に常任理事国のP5に、私たちの今後を決めさせるわけにはいかない。国際的な広い総意と言う意味合いを持たせるために、あらゆる議論は総会で行われなくてはならない」という主張をよく耳にするようになりました。

今年の総会の委員会での協議の重要性は非常に高く、国連ならではのいろいろな案件が並行して協議され、総会の閉会時に採択されることになりますが、それに向けて、今季議長のドイツのベアボック元外相の手腕が問われています(ゆえに今回、イスラエル問題のみならず、ウクライナ問題でも、ドイツは表立って尖った主張は控えているようです)。

あと今回の総会に際して大きな変化が起きたのが、これもイスラエル関連のものですが、フランス、カナダ、オーストラリア、ポルトガル、そして英国がパレスチナ国家の承認に踏み切り、日本は今期での承認はしなかったものの、石破総理が「承認の可否ではなく、いつ承認するかの問題」と踏み込んだ発言を行い、イスラエルへの強い不快感と抗議の意思を鮮明にしたことでしょうか。

アメリカはこの動きを非難し、「国家承認が紛争の終結に繋がることは無い」と発言したり、新任の国連大使であるウォルツ氏も「国家承認と言うが、承認する主体がないのに、この動きは無意味だ」と発言したりしています。ただ世界の趨勢はpro-Palestineであり、イスラエルへの強い非難に傾いています。

ではウクライナ問題はどうでしょうか?

こちらもロシアの侵攻から早くも3年半たちますが、一向に解決の兆しは見えてきません。

トランプ大統領による仲介の労は高く評価できますが、平和構築の場であるはずの国連本部は、「欧州がウクライナに追加で軍事支援を行う」とか「NATOが支援を強化すれば、ウクライナが領土を回復できる(トランプ大統領)」といった内容の話が飛び交い、和平に向けた話し合いと言う本来の機能が全く働いていません。

ただ、ゼレンスキー大統領は相変わらずニューヨークにきて欧米の首脳にbeggingしていますが、総会の場ではかつてのようなゼレンスキーフィーバーは起こらず、彼の演説に対しても、また言い分に対しても大多数の国々は冷淡か関心を示さないという姿勢を取っています。

「ウクライナの問題は解決できないだろう」
「ウクライナよりも、今はガザだ」
「紛争には関わりたくないし、ウクライナ問題に注がれるリソース(人とお金)を途上国の開発問題や災害支援、気候変動などのグローバルな危機に振り向けるべき」

このような声が強く、一応、事務総長主催での首脳級特別会合は開催されたものの、各国の反応は薄く、ウクライナが窮状を訴え、同時にロシアと中国を強く非難することで、中国の激しい反応を招き、議論が紛糾して、結局非難合戦に終始し、何ら具体的な解決に結びつくような内容がなかったという、悲惨な結果に終わったようです。

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