石破首相が堂々と語った民主主義と国際秩序維持の重要性
国連の場が、本当にトランプ大統領が言うように、形骸化し機能不全に陥っているのであれば、どんどん紛争調停の場は国連の外に移り、そこでは各国の利害が複雑に絡み合うため、決してニュートラルとは言えず、それが紛争当事国の安全を本当に保証するものにできるかは未知数と言わざるを得ません(一応、Multilateral Mediation Initiativeはニュートラルであるように努力していますが…)。
そのような中、観客は少なったようですが、石破総理の演説内容は的を射ていたという印象でした。
例えば「全体主義や無責任なポピュリズムを排し、偏狭なナショナリズムに陥らず、差別や排外主義を許さない健全で強じんな民主主義こそが、自由で開かれた国際秩序の維持強化に資する」という発言は、現在の混乱の国際秩序に対する警鐘であると思われますし、堕ち行く国連の存在意義に対して発破をかけているようにも聞こえました。
国際協調に基づく国際秩序をいかに守り、法の支配による安定を保証し、多極化が加速する国際社会において、日本がどのような働き・役割を果たしていくべきかという覚悟が見えた内容であったように感じました。
これから約1か月半の間、総会の下、いろいろなグローバルアジェンダが協議され、混乱する国際社会の中、いかに各国が手を取り合って困難な課題の解決に取り組むことができるかが試されます。創立から80周年を迎えた今年の総会において、国連はどのような姿を見せ、そしてその必要性を世界にアピールすることができるかが問われています。
石破総理は演説の中で「広島が最初の被爆地である事は歴史的事実であります。これは変わることがありません。しかし、長崎が最後の被爆地になるかどうかは人類のたゆまぬ努力と賢慮にかかっています」と述べました。
戦後かつてないほど対立構造が鮮明化し、国際協調体制が崩壊の危機にある中、核兵器がもたらす人類壊滅の危機が高まっています。
私は国連ファンとして、ぜひ国連に再度、紛争調停役の責任を果たし、国際協調のための話し合いの場としての役割を取り戻し、そしてより高い正当性をもって、再度、平和と安全保障の番人として機能してほしいと切に願っています。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年9月26日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ
image by: noamgalai / Shutterstock.com









