「高市総裁歓迎ムード」が広がる国民民主党の内部
両氏とも情勢調査で30票程度とみられていたが、麻生派の票が上乗せされ、小林氏44票、茂木氏34票となった。このまとまった票を決選投票で高市氏に流し込むための事前の“指令”が「党員が選んだ人間にまとまれ」であったに違いない。
その結果、高市氏の議員票は1回目が64だったのが決選では149に、議員票で圧倒的有利とみられた小泉氏は145(1回目80)にとどまった。麻生氏が旗色を鮮明にしたことが、高市勝利の決め手となったのである。
総裁選の投票日より数日前、高市氏は党本部を訪れ、麻生氏と会談した。この頃、林氏を除く他の総裁選候補者も麻生詣でをしていたので、麻生・高市会談の内容はさしたる関心を持たれなかったが、すでにその席で、かなり突っ込んだ話し合いが行われていたのではないだろうか。
つまり、麻生氏が高市氏を支援するなら、そのかわり、高市氏が総裁になったあかつきには幹事長など主要人事について麻生氏の意見を聞くといったようなことだ。
6日付の朝日新聞朝刊にはこんな記述がある。
選挙中、高市氏の陣営内では「協力が得られるのであれば、勝った後の人事は麻生さんの好きにしてもらえばよい」という声もあった。
事実、投票から一夜明けた5日の各紙には、早くも党幹事長として麻生氏の義弟、鈴木俊一氏の名前があがった。仲間づくりが不得意で党内基盤の弱い高市氏は、古い自民党の象徴である麻生氏を後ろ盾として政権運営を進めるハラを固めたと見える。極端に言うなら、“麻生支配”を甘受する政権である。
麻生氏はさっそく動き始めた。6日、国民民主党の榛葉賀津也幹事長と都内で会談した。麻生氏はかねてから榛葉幹事長と太いパイプがあり、岸田政権下の2022年には、自公国の連立を真剣に協議した経緯がある。
なにしろ衆参ともに自公で過半数に満たない少数与党だ。野党の協力がなければ予算や法案が通らない。当然、自民党としては、連立を拡大して安定政権を確立したいはずだ。
自民党との連立に前のめりになっていたのは日本維新の会だったが、あくまで進次郎政権を想定したものであり、高市総裁の誕生で、実現はやや遠のいた。
高市総裁は、「年収の壁」など積極財政策で一致する国民民主との連立を望んでおり、麻生氏と考えは一致している。麻生氏との会談の後、ニッポン放送のインタビューで、榛葉幹事長は次のように語った。
「高市さんは総裁選挙中、ほとんど国民民主党が言ってきた政策を訴えてくださった。国会や政党の数合わせじゃなくて、国民のやってほしいことをやることが大事だと思いますから、そのことも麻生さんにはお伝えしました」
国民民主はこれまで、かりに小泉政権になり維新が連立に加われば、少数与党が解消して副首都構想など維新の政策が優先されるため、政策実現が難しくなるという危機感を抱いていた。
それだけに、国民民主の内部には「維新と高市氏にこれといったパイプはない。連携相手はウチだけだ」(同党幹部)といった高市総裁歓迎ムードが広がっている。榛葉幹事長の発言からもそのようなニュアンスがくみ取れた。
国民民主は、政策実現のための連携にはすんなり応じるだろう。だが、選挙協力を含む連立ということになると、簡単にはいかない。まずは、支持母体の「連合」が強く反対するだろう。なにより、自民党の古い政治に対し、新たな対案を示すことによって支持を拡大してきた国民民主の存在意義が、連立によって埋没し、希薄化する恐れがある。それは党の存亡にも関わってくるだろう。
「年収の壁」引き上げやガソリン暫定税率廃止を連携の条件とする国民民主の意向に沿い、高市総裁は、財務省の財政均衡路線を死守する“ラスボス”宮沢洋一税制調査会長を退任させる方向だといわれる。
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