高市総裁でも逃れられぬ「財務省の呪縛」。麻生太郎の“言いなり”になること確実な高市政権が招く熱烈な支持者たちの深い失望

 

公明党との関係にも影を落としている麻生太郎の復権

高市政権が誕生し、財務省の圧力を跳ね返して、生活重視の積極財政策を進めることができるのなら、首相交代の意義深さを国民は感じ取ることができるだろう。

しかし、そう思うように進まず、首相が党の族議員や霞が関官僚に妥協して、中途半端な政策しか実行できなかったのが、これまでの自民党政権だ。高市氏が崇拝してやまない安倍晋三元首相ですら、積極財政策に抵抗する財務省を内心で呪いながらも、10%への消費増税を二度の延期を経て断行せざるを得なかった。

ましてや高市氏は総裁選で勝つために麻生氏の力を頼み、その結果、国民民主との交渉と党役員人事を麻生氏の主導に委ねたのである。麻生氏が副総裁、財務大臣経験者であるその義弟、鈴木氏が幹事長、麻生派の有村治子氏が総務会長といった布陣だ。麻生氏はかつて積極財政論をぶっていたこともあったが、安倍政権で財務大臣をつとめてからは、財務省寄りに宗旨替えした。鈴木幹事長が財務省ベッタリなのは言うまでもない。高市総裁が財務省の呪縛から逃れるのは至難の業といえる。

麻生氏の復権は、公明党との関係にも影を落としている。麻生氏はこれまで公明党との連立に否定的な意見を表明してきた。敵基地攻撃能力(反撃能力)保有をめぐる与党協議に関し、公明党幹部の存在を「ガンだった」と2023年9月の講演で酷評したのはその顕著な例だ。

公明党は石破政権が誕生したさい、麻生氏が“失脚”し、近しい関係の菅義偉氏が復権したことを歓迎していた。菅氏を後ろ盾とする小泉進次郎氏が新総裁になると見込んで楽観視していたのに、麻生氏によってどんでん返しが起こり、高市・麻生体制になった。そして、麻生氏が公明党をさしおいて、国民民主の幹事長と連立がらみの話し合いをした。

不信感を募らせた斎藤鉄夫代表は、高市新総裁と会談し、靖国参拝をめぐる歴史認識や外国人との共生などについて「支持者から大きな不安や懸念がある。その解消なくして連立はない」と申し入れた。

平和と福祉を重んじる公明党としては、戦前の国家主義に肯定的な高市氏に対し、無条件に連立を受け入れるのでは、支持母体である創価学会の会員に整合的に説明できない。

公明党内には裏金イメージの自民党とくっついているのが党衰退の原因という見方も広がっている。それならいっそのこと連立を解消するのがお互いのためだろうが、あっさりと権力を手放すほど潔い政党とも思われない。

学会票に依存する自民党。政権与党の旨みに浸かり続けたい公明党。その政治的妥協でおさまりがつくのがこれまでの通例であり、公明党の言い分を真に受けることは禁物だ。

もちろん、高市氏には大いに期待感もある。世襲議員ではないし、飲み食い政治とも無縁だ。しかし、不安要素があまりにも大きい。その政権のなかに、麻生氏の長老支配に都合のいい人事構成が埋め込まれているのだ。

高市氏が、古い自民党と霞が関、業界団体からの圧力に屈し、中途半端な現実路線で妥協しようとしたら、その歯切れのよい政策論を称賛していた支持者たちの深い失望を招くだろう。「政権のガン」が麻生氏ということにならないよう、高市氏はよほど心してかからねばなるまい。

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