拷問の果てに消えた命、沈黙する国家。カンボジア韓国人誘拐・死亡事件の真実

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カンボジアで発生した韓国人大学生誘拐・死亡事件は、韓国の大きな問題をはらんでいます。それに迫るのは、無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者です。この事件は、単なる悲劇なだけではなく、韓国という国家が、本当に国民の命を守る意思を持っているのかを問う「痛烈な警鐘」と言えるのではないでしょうか。

カンボジアでの韓国人大学生誘拐・失踪・死亡事件

カンボジアで韓国人大学生が犯罪組織に拉致され、拷問を受けた末に死亡するという信じがたい事件が発生した。さらに私たちを怒らせるのは、救出作戦が行われるわずか1日前に、彼がすでに亡くなっていたという事実である。もしたった一日でも早ければ、22歳の若者は生きて帰れたかもしれない。今回の事件は、単なる海外での悲劇を超え、在外韓国人を保護すべき政府のシステムに重大な欠陥があるのではないかという深刻な疑問を投げかけている。

事件の詳細は、一緒に監禁され後に救出された別の被害者の証言によって明らかになった。死亡したB氏と同じ場所に閉じ込められていたというA氏の話は、まさに地獄のようだった。B氏はすでに別の犯罪組織で麻薬の運び屋として利用され、激しい暴行を受けたあと現在の組織に「売られて」いたという。

A氏によると、「B氏はあまりにもひどく殴られて、治療を受けても歩くことも息をすることもできない状態だった」「結局、病院に運ばれる車の中で息を引き取ったと聞いた」と語った。

実際、現地で発行された死亡証明書には死因が「拷問による極度の苦痛」と記され、死亡日時は救出作戦の前日、8月8日とされていた。韓国政府と現地警察が協力して犯罪組織を急襲し、韓国人14人を救出したのはその翌日の8月9日。いわば「ゴールデンタイム」を目前で逃した形となった。

さらに衝撃的なのは、事件から50日以上経っても、B氏の遺体がまだ韓国に戻っていないという点だ。現地の司法手続きのためだとはいえ、遺族の悲痛な思いを考えると政府の外交的対応があまりにも杜撰で遅いのではないかという批判が噴出している。

実はこの事件は「予告されていた悲劇」とも言える。最近、カンボジアでは韓国人を狙った誘拐・監禁事件が爆発的に増えていたのだ。2021年にはわずか4件だった被害報告が、今年(2025年)8月までにすでに330件を超えている(今年だけでだ)。

多くはインターネット上の「高給バイト」や「海外就職」などの巧妙な求人広告に騙された若者たちで、彼らは監禁、暴行、拷問はもちろん、麻薬の強制投与まで受けるなど、地獄のような時間を過ごしている。しかしこうした状況にもかかわらず、韓国大使館や外交部(外務省)の対応はあまりに安易だった。被害者家族や救出された人々は口をそろえて「現地警察と大使館の対応が遅すぎる」「通報しても何の措置もなかった」と訴えている。

中には「監禁された建物の正確な住所、顔写真、パスポートの写し、映像証拠を出さなければ捜査はできない」と言われたケースもあったという。犯罪組織に監禁され命の危険にさらされている人間にどうやってそんな証拠を集めろというのか。いったい誰のためのマニュアルなのか、問いたださざるを得ない。

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