靖国参拝を“封印”し独裁者ともリベラル指導者とも良好な関係を築く。高市首相が見習うべき「習近平の野望」から日本を守った安倍晋三氏の外交手腕

 

ちなみに、私は当時から「反日統一共同戦線戦略」のことを知っていたので、「靖国にはいかない方がいい。習近平の罠だ」と警告していました。そのことで、保守派から大いにバッシングされたのですが、日本国を守るために、いわざるを得ませんでした。

2014年初め、日本は、世界一孤立していました。しかし、2014年3月、プーチンがウクライナからクリミアを奪ったことで、「世界一の巨悪」がプーチンになった。それで、国際社会は「靖国問題」を忘れたのです。

高市さんに知ってほしいのはここからです。

小泉さんは、在任中6回靖国を参拝しています。しかし、より保守の安倍さんは、在任中1回しか靖国を参拝していません。

つまり安倍さんは、2013年12月の参拝で大バッシングされて、「これはもう行けないな」と理解したのです。そして、「反日統一共同戦線無力化」のために全力を尽くされました。

中国は、ロシア、韓国、そして【アメリカ】と反日統一共同戦線をつくろうとした。安倍さんは、アメリカ、ロシア、韓国と和解することで、反日統一共同戦線【無力化】に成功しました。

安倍さんは、リベラルのオバマ、保守のトランプ、どちらとも親友でした。そして、民族主義者のプーチンとも、超リベラルのメルケルさんとも仲良しでした。

安倍外交の大戦略は、ご自身が提唱され、西側共通対中戦略になった「自由で開かれたインド太平洋」です。日本、アメリカ、オーストラリア、インドなどを核にして中国を封じ込めるのです。

もう一つは、「反日統一共同戦線戦略無力化」です。アメリカ、ロシア、韓国との仲を改善することで、「反日統一共同戦線」を無力化したのです。

自民党総裁になった後、高市さんは、「センターより」になっています。前回は、「総理になっても靖国に行く」と断言し、岸田さんから「高市だけはイカン!」とダメ出しされて石破さんに負けました。今回は、靖国に行かないことで、中道、左の人たちも取り込んで、勝利できたのです。

保守の皆さんは、「ブレた!」と不満かもしれません。しかし、安倍さんもそうでした。

安倍さんは、2013年以降靖国に参拝せず(=習近平の罠にはまらず)、右寄りのトランプ、プーチンだけでなく、リベラルなオバマ、メルケルとも良好な関係を築き、日本を守ったのです。

高市さんを、「右より過ぎる!」と批判する人はたくさんいます。しかし私は、安倍さんの愛弟子である高市さんは、安倍さん同様「保守リアリスト」で、きっとうまく外交をやるだろうと思います。

国民は、とにかく「はっきりいう政治家」「強気な政治家」が大好きです。松岡洋祐が国際連盟を脱退した時、日本国民はお祭り騒ぎで、彼を「英雄!」と称えたのです。そして日本は、破滅に向っていきました。

私たち国民も、賢くなる必要があります。日本の主な仮想敵は、「日本には尖閣だけでなく沖縄の領有権もない」と主張する中国です。そして、中国のGDPは約19兆ドルで、日本の4.75倍。日本一国で勝てる可能性はほぼない。

それで日本は、アメリカ、欧州、インド、オーストラリア、東南アジアなどを巻き込んで、アジアの「バランスオブパワーを回復する」必要がある。その為には、「強気ではっきりいう」だけでは全然足りません。

優秀な指導者は、時が経つにつれて仲間を増やしていきます(例:安倍さん)。無能な指導者は、時が経つにつれて、自国を孤立化させていきます。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2025年10月22日号より一部抜粋)

image by: 安倍 晋三 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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