画像生成AIの競争は、いま大きな転換点を迎えています。Adobeは自社AIに閉じず、GoogleやOpenAIとも連携するというポータル化戦略をとり、生成AI市場のルールそのものを変えつつあります。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、この戦略を詳しく紹介し、これからの時代について視点を向けています。
アドビがライバルになるかと思われたグーグルとタッグ―-画像系生成AIのポータル化でガッチリ稼ぐ戦略に
今週、クリエイター向けイベント「Adobe MAX」をロサンゼルスで開催したアドビ。
注目は、アドビのソフトから自社製AIだけでなく、グーグルやオープンAIの画像系AIにお願いができるようになったという点だ。他社のAIを使った場合でも、アドビのアカウントで持っているクレジットで支払えるのが特長だ。
つまり、アドビは画像系生成AIの世界で「ポータル」になったことを意味する。クリエイターはアドビにアカウントがあれば、他の画像生成AIサービスを渡り歩き、それぞれで課金する必要がなくなるのだ。
ただ、アドビのクレジットは使い切れなくても、翌日に繰り越せたりはしない。残ったクレジットは月をまたぐとすべて消滅してしまうなど、使い勝手が悪い。
こう考えると、生成AIのクレジットが、いよいよスマホ業界の「データ容量」に近い感覚になってきたように思える。
アドビ以外のプラットフォームで、様々な生成AIサービスを1つのアカウントから利用でき、しかも、余ったクレジットを翌月に繰り越せたり、友達に渡したり、家族で分け合うなんて事ができたら面白そうだ。
今後、画像生成AIに限らず、人気の生成AIサービスを横断的に使えて、クレジットは1つのサービスのところを使い回せるようになると利便性が上がるのではないだろうか。「こっちのクレジットは少ない量で使える」といった競争が盛り上がると、より賢く安価にクレジットを使えるようになるのではないか。
将来的には、クレジットカードを持っていない学生などに向けて、コンビニ店頭でPOSAカードを使って、生成AIのクレジットを買うなんてこともあり得そうだ。
本来であれば、携帯電話会社がポータルを作り「いろんな生成AIサービスをひとつのアカウントで、同じクレジットで使い回せる」といったサービスを作れるポジションのような気がしていた。KDDIが「AIマーケットを作る」と言ったときにはそんなサービスを夢見ていたが、残念ながら、違う方向性に舵を切ってしまったようだ。
いずれにしても、生成AIのクレジットは、それだけで価値を持ち、流通する市場が存在してくるように思える。その点、アドビは上手いこと他社を先行した一方、まだまだ、新規参入して追随できる企業もありそうだ。
この記事の著者・石川温さんのメルマガ
image by: Sunil prajapati / Shutterstock.com








