捏造、冤罪、虚偽の流布。東京地検特捜部に翻弄された4人が明かす、日本最大のタブー「官報複合体=検察&巨大マスコミ」の悪辣な実態

 

若狭勝~内部から見た特捜部の論理

若狭さんは東京地検特捜部の副部長として、ライブドア事件までの特捜部を支えた検事のひとりだった。林、佐久間、黒川、郷原と並んで司法修習生同期で、法務省では将来を嘱望された5人のエリート幹部候補ともいわれた時期もあったが、早期に退官し、国会議員などを務めて、2016年の東京都知事選では小池百合子氏の側近として自民党に反旗を翻し、候補者選考で私と昼夜を共にした仲となった。

番組で若狭さんは、特捜部の「費用対効果」について率直に語っている。「同じような証券取引法違反の事件が2つ3つあったとした場合、一番国民がよく知ってる会社や個人をやる。それが一罰百戒です」と正直に告白したのは意外であり、若干驚いた。

長らく検察を取材した者からすれば、この発言は勇気のある行為だったとわかる。特捜部は正義のために捜査するのではなく「見せしめ」のために動くことがあると元職とはいえ古巣を相手に証言したのだ。若狭さんの勇気は知っている者は知っている。若狭さん自身が認めたこの構造は、西松建設事件やライブドア事件(後述)の本質を物語っているといえよう。

とはいえ、若狭さんは特捜部自体がメディアにリークすることは「かなり厳格に制限を貫いてた」と特捜部側の意見も代弁している。

「情報を流すと逮捕しようとした人が出頭してこなくなる」からだと言いながらも、「上層部の方からマスコミに話が流れる」ことは「いつも感じていた」とも相反するコメントを述べた。古巣への配慮を伴った若狭さんの苦しい証言を、私は十分に理解できる。特捜部などからメディアに漏れるのではなく、特捜部からの内部報告で検事総長や他部局への情報共有で、法務省などから漏れることも多いのだ。それこそ官報複合体の構造を理解すれば、その組織の巧妙さを示す重要な発言であることがわかるだろう。(後編に続く)

※本稿は『NoBorder』第21回「巨悪を”作る”正義─誰も知らない東京地検特捜部とオールドメディアの複雑な関係」(2025年11月15日配信)をもとに、上杉隆が執筆したエッセーである。

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