今やドナルド・トランプの別宅と化したホワイトハウス
第45代の説明板には、政治経験も軍事経験もなしに大統領に選出された初めての優れた人物であり、16人の共和党対立候補と民主党候補のヒラリー・クリントンを破り、重要な激戦州をすべて覆して圧勝したと書かれています。「304対227」が圧勝かどうかは微妙なところですが、トランプならたとえ1ポイント差でも圧勝と書くだけのツラの皮を持っていると思います。
何しろトランプは、第45代の自分の業績として「減税」「規制緩和」「軍事拡張」「NAFTAの終結」「ISISの打倒」「COVID-19パンデミックの対応」などに留まらず「アブラハム合意からの離脱」や「イラン合意からの離脱」や「パリ協定からの離脱」まで鼻高々と挙げているのです。そして「世界史上最大の経済を成し遂げた」とまで書いているのです。もはや嘘とかデマとかのレベルを完全に超えています。
さらに第47代の現在の説明板には「2024年の大統領選で歴史的勝利を収め、312もの選挙人票を獲得し、132年ぶりに非連続任期をつとめることになった初の大統領である」と記されており、トランプが大統領に返り咲いたことによって「アメリカの黄金時代が始まった」とまで書かれているのです。
そして、就任からわずか8カ月の業績として「8つの外国紛争の終結」「インフレの抑制」「国境の安全確保」「数兆ドルの海外投資の誘致」「新たな関税による巨大な利益」「NATOからの貢献拡大」「新たなミサイル防衛プロジェクト」など、根拠不明な自画自賛は枚挙に暇がありません。
その上、ホワイトハウスのイーストウイング(東棟)に建設中のサッカーグランドよりも大きい巨大宴会場まで、自分の手柄として明記しているのです。ま、今回の「プレジデンシャル・ウォーク・オブ・フェーム」の説明板に限らず、今やホワイトハウスはドナルド・トランプの別宅のようなもので、その極めつけがオーバルオフィス(大統領執務室)なのです。
今年1月20日に就任したトランプは、わずか2カ月でオーバルオフィスの内装を自分の好みに模様替えしてしまったのです。まずは前任のバイデン大統領時代には6枚だった壁の肖像画を、一気に20枚に増やしたのです。そして、トランプが富と権力の象徴だと信じる金色のオブジェが、ところ狭しと飾られたのです。純金なのか金箔なのかは分かりませんが、金色の人物像や天使像があちこちに置かれ、サイドテーブルには金色の鷲(わし)のオブジェが飾られ、そこら中が金色のもので埋め尽くされたのです。ああ恥ずかしい…。
何よりも呆れたのは、テレビのリモコンまで金箔を貼った特別製のものと交換したと言うのです。成金趣味どころの話じゃありませんね。もはや「ザ・下品」としか言いようがありません。
さらには、これまで重要な発表や記者会見の場として使われて来た外部のローズガーデンも、トランプの趣味に変えられてしまいました。美しかった芝生は一部が剥がされて、海辺のリゾートホテルの中庭のようなパティオスタイルに改造されたのです。その上、トランプは、現在建設中の巨大宴会場の内装を、フランスのヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」を模して装飾すると抜かしているのです。
元ホワイトハウス高官は「すべての大統領には執務室を自分好みに飾る権利があるが、トランプ大統領のスタイルはまるでどこかの国の王様のようだ」と指摘しました。その一方で、ホワイトハウスの敷地内はアメリカの歴史的空間でもあるため、本来は大幅な変更など許されません。しかし、すでに巨大宴会場に関して多くの批判が出ていますが、もちろん王様の耳には届いていないのです。何しろ「王様の耳はロバの耳」ですから。
※ ちなみに、英語で「オスのロバ」を意味する「jackass(ジャッカス)」はスラング(俗語)で「バカ」「マヌケ」という意味になります。
(『きっこのメルマガ』2025年12月24日号より一部抜粋・文中敬称略)
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image by: X(@The White House)









