選ぶべきは自民か中道か?実は「同じこと」を主張しているにすぎない与野党を分ける“意外なキーワード”

 

社会の変化に政治が追いついていないアメリカ

一方でアメリカの劇場というのは、日本とは全く異なります。

まず政権の側は、年明け以降だけでもベネズエラの一幕、グリーンランドの一幕、そして現在はミネソタにおける陰惨な一幕と、どれも短くそして未解決のドラマを演じています。

これに対して野党民主党は、それぞれに国際法違反だとか、官吏による市民の処刑だという主張で喧嘩を買うという行動をしています。一理も二理もありますが、同時にそれ以上の対応でもありません。

いずれにしても、政治の舞台の上では陰惨かつ未解決の寸劇が延々と繰り広げられています。その裏の薄い幕を剥がすと、そこにはインフレの問題がありますが、更にその裏にはAIと雇用、グローバリズムと雇用という未解決の問題が広がっています。

非常に大きく俯瞰的に見るのであれば、AI+グローバリズムと雇用の問題については、与野党ともに直視していないのは明らかです。そんな中でどちらかと言えば、トランプ政権のほうがこの問題には意識的です。

「関税政策でグローバリズムを抑制して製造業回帰を狙う」

「戻ってきた製造業はロボット化されるが、新たなブルーカラー雇用は生み出す」

「AIの開発は民間に任せるが、国際競争力は維持させる」

「AIがホワイトカラーの職を奪うのは必然、だからこそのブルーカラー重視」

というのはトランプ政権の立場です。正確に言えば、4番目の部分については、大統領自身の世代的な限界とも思われますが、明確に自覚はしていないと思われます。

問題は民主党の方で、

「主流派は、グローバリズムを否定できないし、しない。AI開発も否定しないが、プライバシー問題や自殺幇助などへの規制は少しやる。AIによる失業についてはダンマリ」

「左派は、グローバリズム否定でトランプ主義に接近。AIの進歩による労働の劣化には強く反対。シリコンバレーにも規制を主張。強めの課税で再分配」

という立場に分裂しています。何度も申し上げますが、特にAI失業に関する穏健派の沈黙は政治的自殺としか言えません。一方で左派の主張はもっともらしく聞こえますが、では全体の成長を否定するのかと問うと、まともな答えは持っていないのです。

冷静に考えると、保守陣営は「表面的な劇場政治においては破壊的で陰惨」であるにもかかわらず、奥にある幕の裏では、ポスト・グローバリズム、ポストDXの時代へのZ世代の不安や不信には一定程度シンクロしています。

民主党の側は、そもそもこの全体構図をあまり理解していないように見えます。そして保守の側も特に4番目の「AI失業への対策としての新ブルーカラー雇用の創出」という政策については、自分たちのほうが現実に近いのに、その自覚が足りません。

ということで、「分断と対立の劇」という双方が共犯の劇場型政治の奥には、かなりの無理解と無責任があるのを感じます。21世紀の社会がどんどん変化してゆくのに対して、政治が追いついていないのです。

そう考えると現在のアメリカの抱える問題というのは、文明的な転換点において、Z世代が抱える不安と不信の核心について、上の世代が理解していない問題だということができます。では、これを理解する勢力もしくは個人が登場するのかどうか、中間選挙においてはこれは大きなテーマになってくると考えています。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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