「平和の使者」という仮面を完全に脱ぎ捨てたトランプ
これにより、米ロは恐らく核戦力の増大と更新に勤しみ、そこに急激に核戦力を伸長させている中国が競争に加わり、インドやパキスタン、そしてイスラエルという実質的な核保有国が核戦力の増強に舵を切るだけでなく、まだ核兵器は持っていないが保有の手前まで来ているとされるイランの核開発を加速し、そしてサウジアラビア王国をはじめとするアラブ諸国を核保有に走らせるという、世界的な核軍拡競争を過熱させ、そこに核戦争と紛争のエスカレーションの脅威の増大が、人類をかつてないほど絶望の淵に追い詰めることに繋がる恐れが大きくなります。
今回の新STARTの失効(2026年2月5日に米ロ両国で期限を迎えた)と、それにより起こり得る危機を踏まえ、「世界終末時計」を毎年発表しているThe Bulletin of the Atomic Scientistsが終末時計の針を “残り89秒”にまで進め、トランプ大統領やプーチン大統領を含む、世界のリーダーたちに警告を提示しました。
その警告、切実なメッセージは果たしてトランプ大統領やプーチン大統領、習近平国家主席、そしてイスラエルのネタニエフ首相などに届いたでしょうか?
耳には入っていると信じますが、それが行動を促す、または何らかの変更をもたらすとは考えられないと感じます。
今年に入ってからトランプ大統領は、「力こそが正義だ」と国際秩序を構築しようとし、平和の使者・ピースメーカーのお面を捨て、アメリカが持つ圧倒的な軍事力と経済力を組み合わせて、意のままに動かない国々に圧力をかけて、果てには、ベネズエラで実際に起きたように、軍事力を用いた強硬的な“矯正”を行う方向に一気に傾いているように見えます
そして今、“国家安全保障のため”と理由を付けて、同盟国デンマークの自治領であるグリーンランドをアメリカ領として“所有”しようという試みに出ています(暴挙と呼ぶべきでしょうか?)。
トランプ大統領が自らの2期目を開始してから1年が経ちましたが、恐らく誰もNATO同盟国の領土を自国のものにすべく攻撃を加えると脅す賭けに出て、同盟と協調に基づく戦後国際秩序を破壊し、力がものをいう弱肉強食の世界に導くとは予想していなかったと思います。
実際、1期目のころから、トランプ大統領の外交は予測不能で、かつ発言内容は思い付きであり、かつ誇張であるという見方が強かったと感じていますが、最近は言行不一致の気配は消え、確実に力こそ正義という信念の下、アメリカの影響力・支配力の拡大に勤しみ、その代償として国際協調と同盟国を切り捨て、
国際舞台でもAmerica Firstを構築しようとしているように見えます。
その走りがイラン、シリア、ナイジェリア、イエメンへの空爆の実施であり、ベネズエラへの侵攻と為政者の拘束という暴挙で、今後、この流れはグリーンランド、キューバ、コロンビア、ニカラグア、メキシコなどに広がり、手薄と思われがちなアジア太平洋地域にも広がるのではないかと思われます。
中国と台湾を巡る直接的な武力対立に至るのは、最後の最後までないと信じますが、北朝鮮がトランプ大統領からの呼びかけを無碍に扱ったり、タイとカンボジアの国境紛争やインドとパキスタンのカシミールを巡る対立といった“仲介”した紛争が再燃したりしそうな時には、限定的な軍事作戦を含む強硬策に打って出て強引な解決を図るのではないかと恐れさえ抱かせる状態に導いています。
「トランプ大統領は世界の救世主・平和の使者などではなく、もしかしたら最後の破壊者なのではないか?」
そのような懸念が容易に浮かぶ状況なのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
トランプ大統領とその政権は、本当に無策で荒唐無稽な行いをランダムに行っているのでしょうか?それとも実は何か行動の背後にある軸が存在するのでしょうか?
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