米軍によるベネズエラ侵攻で中国が失った膨大な債権
次は1月3日に強行されたベネズエラへの侵攻とMaduro大統領夫妻の拘束作戦です。軍事的には米軍側に一人の犠牲者も出さずにmission accomplishedとなる完璧な勝利に終わりましたが、
外交的な部分とエネルギー安全保障の面、そして米国内の内政上、大きな課題を自ら背負うことになりました。
作戦の目的は、表向きはベネズエラのCartel del Sol(太陽のカルテル)と呼ばれる、大統領以下閣僚も深く関与する麻薬カルテルの撲滅とされていますが、この点についてはCartel del Solの支部が全米に広がっていることと、ベネズエラから米国への直接的な麻薬の密輸はほぼないことから、目的は麻薬面では生産地のコロンビアおよび全米内に散らばるCartel del Solへの宣戦布告という一面があると考えられます。
しかし、これはメインの理由ではありません。
メインの理由は世界最大の埋蔵量を誇るベネズエラの原油権益のコントロールを中ロから奪い返し、西半球および中南米での中ロの影響力を一気に削ぎ落し、剥がしてしまうことと言えます。
埋蔵量3,030億バレルと見込まれているベネズエラの原油ですが、国営化後、目立った開発および設備などの更新が滞っており、フルに産出のキャパシティーを発揮できなくなっていたところに、技術と資金援助、および投資を通じて権益を拡大してきたのが中国とロシアの国営石油企業という構図が確立されていました。
それにつれて、ベネズエラの原油を武器に、キューバのコントロールを握り、ニカラグアなどの反米社会主義国家を中ロ陣営に絡めとり、アメリカ合衆国の目と鼻の先で“よそもの”の中ロが影響力を拡大するという構図になっていました。
それを攻撃と大統領の拉致・拘束を通じて食い止めるのが目的と言えますが、中ロをベネズエラの原油権益から追放し、国際原油価格のコントロールを排除するためにトランプ政権が行ったのが、明らかに麻薬関連の甘い汁にも浸かっているチャベスとMaduroの申し子といえるロドリゲス副大統領を暫定大統領に据え、原油大臣も兼ねる彼女を権力の座に就け、それをアメリカが支える体制をとることで、一気にベネズエラの原油へのコントロールをアメリカが確保する体制にしたものと考えます。
それゆえに、昨年のノーベル平和賞受賞者で反チャベス・Maduroの筆頭であるマチャド女史を直接権力の座に就けるという政権転覆と交代を演出するのではなく、確実に原油権益を掌握することを優先する奇策に出たものと考えます(奇策とは言っても、実を取るための現実的な判断に傾いたと言えるでしょう)。
ロドリゲス暫定大統領は、自らの立場・地位および生命が保証され、かつベネズエラの原油開発と施設の近代化、そして原油の増産から生まれる利益をアメリカがベネズエラ国民に還元すると約束をするという“成果”を掲げ、権力基盤を維持できたことで、一応の協力体制が出来、かつ中ロを排除するという動きにも、アメリカという旗印を利用して行うことで、責任逃れが出来るという確証を得たことで、当面はアメリカに楯突くようなことは無い状況が作り出されています。
こうなるとこれまでに多大な投資を行ってきた中国(とロシア)にとっては、自らの投資が回収できない事態が即座に生まれ、著しく影響力を削がれる結果になっています。ベネズエラ産の原油の輸入については、中国に取っては第12位の相手であったことから実質的な痛手は被っていないと思われますが、問題はこれまでにつぎ込んだ投資と施設の回収が出来ず、アメリカに取り上げられることで中国が所有する膨大な債権を失い、それが中国経済にはボディーブローのように効いてくることになります。
またベネズエラ産の原油の権益を、OPECプラスのロシアと共に握ってきたことで、原油の国際価格に影響を与え、可能な限り安価に大量の原油を調達できる体制を築いていましたが、それを一夜にしてアメリカに崩される結果となり、大きな経済的な損失を被ることになりました。
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