帝国主義への逆戻りか、計算された戦略か?米トランプ「力による外交」の複雑な構図を読み解く

 

トランプが中国へ向け発信している穏やかならぬメッセージ

先週号でも少し触れたような気もしますが、トランプ大統領とアメリカ政府が行っている一連の動きは気まぐれとは程遠い、綿密に計算された動きであると考えられます。

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もちろん、そのすべての行動が成功裏に終わっているということはなく、計算違いややりすぎ、そして勇み足的なものも散見される気がしますが、【力こそ正義】、【力による外交】を強行する中で共通している対象があります。

その最たるものは【中国の影響力拡大の最前線の封じ込め】という要素・対象です。

ベネズエラへの侵攻、イランへの攻撃と再攻撃の予告、イエメンへの攻撃(その後、一応、フーシー派とは手打ちしているが、今後については未定。しかし、サウジアラビア王国とUAEの争いがイエメンを巡って繰り広げられていることから、事態の収拾に向けた動きの中で、再度、イエメンが犠牲になる可能性は大と見ている)、ナイジェリアにおける“キリスト教徒保護”という名目でのIS狩り、シリアにおける少数派イスラム教徒の権利保護と人道的な介入と称した軍事作戦(ただし、これはガザのみならず、シリアにも手を伸ばそうとするイスラエルの動きへの牽制も兼ねたものと考えられる)、キューバに対する締め付け、コロンビアとメキシコへの脅しを通じた圧力、そしてグリーンランドの領有・所有に向けた動きとプレッシャー…。

これらすべての背後に見据えているのが、中国です。

イランについては、予てより戦略的パートナーシップを通じた助力により、中国はイランからの原油を安価で、そして安定的に手に入れる体制を確立しており、その見返りにイランの孤立を緩和するために経済的な支援と外交的なサポートを行っています。

中国政府としては、特にイスラエルを直接的に敵視しているわけではないですが(とはいえ、ネタニエフ首相と現政権のガザおよびパレスチナでの一連の蛮行に対しては激しい非難を加え、自国のことは棚に上げつつも、ICCによる対ネタニエフ首相逮捕要請を支持していますので、関係は悪化しています)、イランを全面的に支えることで間接的にイスラエルを危機に晒していると、トランプ政権は認識し、中国のイランを通じた中東全域に対する影響力を削ぐべく、イランという“口”の前に立ちはだかって対峙しています。

そしてそれに加えて、イランの核開発に少なからず寄与していることも掴んでいるのか、アメリカ政府としては一線を確実に超えたといえるアメリカ軍によるイランへの直接空爆の再開の可能性についても言及し続け、イランの核開発と現体制の背後にいる中国に「あまりでしゃばると、巻き沿いを食うぞ」と脅しをかけていると分析しています。

外交的に仲介を行い、ミッションインポッシブルと言われてきたイランとサウジアラビア王国の関係改善をお膳立てしたことで、イランを入り口にしてアラブ世界全体に影響力を拡げ、イスラエルを飛び越して東アフリカ地域にまで影響力を及ぼして、アメリカの中東における権益と影響力を次々と、オセロの駒のように、ひっくり返している現実と勢いを、イランと言う入り口を封鎖することで阻止したいという思惑が見えてきます。

中国のアクセスを減らすという目的と共に、今の体制を転覆させて対中体制を転換させようという意図から、イランにおけるupheavalを背後で支援し、工作活動も展開して、じわりじわりとイランの現体制を瓦解させようとする作戦を実施しています。

背後にいる中国とロシア、そして地域における工作を忌み嫌うトルコとのバランスが、今後の展開を占ううえでのカギとなりますが、いろいろなアングルから見ると、確実に現時点では中国の影は薄くなっているように見えます。

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