ウォール街も震撼。中島聡が「SaaS株急落」の裏で進むAIエージェント革命と覇権争いの行方を読み解く

 

OpenClawが示した可能性

そんな中で、AIエージェントを簡単に自分のパソコン上で走らせることを可能にするOpenClaw(旧名Clawdbot)というオープンソース・プロジェクトが主に開発者の間で注目されている点には注目すべきです。

セキュリティ上の問題があるとは言え(別の言い方をすれば、安全性よりも価値の提供を優先して作られているが故に)、さまざまなパソコン上の作業を自動化することには大きな価値があることを証明したという意味で、OpenClawが果たした役割はとても大きいと言えます。

OpenClawの成功を見て、同様の機能をAnthropic、OpenAI、Google、Microsoftが彼らのサービスに組み込んでくることは明らかで、2026年は、それらのAIエージェント・サービスと、OpenClawに代表されるオープンソース型のAIエージェントの間で競争が激化し、それがソフトウェア業界全体を発展させると私は期待しています。

OS・ブラウザ企業の大きなチャンス

MicrosoftでOSの開発に関わっていた私としては、ここは、MicrosoftとAppleにとって大きなチャンスだとも感じています。

MicrosoftとAppleは、過去にVisual Basic、Apple Scriptというスクリプト言語(「マクロ言語」とも呼ばれていました)を使って、OSやアプリケーションの操作を自動化しようと試みていたことがありますが、大きな成功には至りませんでした。

OpenClawにセキュリティ上の問題があるのは、何でもできてしまう(例:秘密鍵を悪意のあるサーバーに漏洩する)シェル・スクリプトを走らせる能力をAIに与えてしまう点にあり、OSのレイヤーでAI向けの(シェル・スクリプトよりも安全な)スクリプトを提供することにより、安全性を担保することはOSを提供している会社の責任とも言えます。

同様のことは、ブラウザー市場で大きなシェアを持つGoogleにも当てはまります。セキュリティ上の問題があるブラウザー・エクステンションをより堅固な形に発展させた上で、AIエージェントによるウェブサイトへのアクセスを許可制にする、ドメイン単位で管理する、などにより、より安全な形でAIエージェントにブラウザーをコントロールさせることを可能にすることが技術的には理にかなっています。

しかし、GeminiをAIエージェントとして使ってほしいGoogleとしては、わざわざ他のAIエージェント向けにChromeを改良・拡張するインセンティブは働かないので、そちらの方向に進化する可能性は低いのかも知れません。(コードが書けるAIの進化により)独自のブラウザーを作ることも容易になったので、OpenAIやAnthropicが提供するブラウザーがシェアを伸ばしたり、オープンソースなブラウザーが広まったりする可能性も十分にある、とても興味深い状況と言えます。

【追記】CRM市場に参入するAIネイティブ企業

The most dangerous fundraise in SaaS right now, and almost nobody is talking about why. HubSpotでChief Product OfficerとしてCRMを作ったChristopher O’Donnellが”Day AI”というAIネイティブなベンチャー企業を立ち上げ、$128billionの規模のCRM市場に参入することを宣言し、Sequoiaから資金調達をしたことを報じる記事です。

「コードが書けるAI」の誕生により、CRMなどの市場への参入障壁が大きく下がったことは確実で、この手のベンチャーが複数誕生し、競争を繰り広げた結果、従来型のSaaSのビジネスモデル(従業員一人当たりの月額課金)が大きな進化圧にさらされることになります。

(本記事は『週刊 Life is beautiful』2026年2月10日号の一部抜粋です。「私の目に止まった記事(中島氏によるニュース解説)」、読者質問コーナーなどメルマガ全文はご購読のうえお楽しみください。初月無料です)

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